建築をめざして

ル・コルビュジエの『建築をめざして』(Vers une architecture)は、近代建築史において極めて重要な位置を占める著作です。1923年に発表された本書は、それまで建築界に浸透していた伝統的な考え方を覆し、新しい建築観を示しました。ル・コルビュジエは、建築を単なる装飾や芸術表現を超えた、機能的な機械と捉え直しました。

本書で最も有名なのは、「住宅は住むための機械である」という言葉でしょう。この一見冷徹な表現は、建築における機能性を重視するモダニズム建築の思想を象徴的に表しています。建築は、そこに住む人々の生活を効率的にサポートする道具として設計されるべきであり、装飾や形式的な美しさは二の次であるという主張です。これは、近代建築における機能主義の到来を告げる、重要な宣言となりました。

『建築をめざして』は、ル・コルビュジエがそれまで発表した雑誌記事などを集成したものです。そのため、多様なテーマが網羅されており、住宅設計だけでなく、都市計画や建築における新しい技術の導入などについても論じられています。当時の最先端技術や思想を駆使し、未来都市像へのビジョンを提示している点も、本書の大きな特徴です。

本書の日本語訳は、建築家の吉阪隆正氏によってなされたものが特に有名です。吉阪氏の訳は、日本のモダニズム建築運動に大きな影響を与え、数多くの建築家や学生たちに読まれました。簡潔で分かりやすい日本語で書かれており、専門知識がない人でも理解しやすい点が評価されています。

『建築をめざして』は、SD選書として鹿島出版会より刊行されており、広く一般に読まれる機会を与えられました。また、樋口清氏による完全翻訳版も存在し、より詳細な内容を理解したい読者にも対応しています。

本書は、近代建築国際会議'>[モダニズム建築]]、CIAM]、[[アテネ憲章、バウハウスといったキーワードと密接に関連しています。CIAMは、モダニズム建築の思想を共有する建築家たちの国際組織であり、アテネ憲章は、都市計画におけるモダニズム建築の理念をまとめた重要な文書です。バウハウスは、機能主義に基づくデザイン教育で知られる学校であり、これらの動きは互いに影響を与え合い、現代建築の基礎を築きました。

『建築をめざして』は、ル・コルビュジエの思想を理解する上で欠かせない著作であり、現代建築の基礎を学ぶ上でも非常に重要な文献と言えます。本書を読み解くことで、モダニズム建築の思想的背景や、現代建築における機能主義の重要性を深く理解することができるでしょう。そして、未来の都市や建築を創造する上で、重要な示唆を与えてくれることでしょう。

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