建議要目

建議要目：イングランド内戦下の改革案

1647年、イングランド内戦下のイングランドで、独立派勢力が発表した国政改革案が「建議要目（Heads of Proposals）」です。これは、議会派内部における長老派と独立派の対立、そしてニューモデル軍の動向という複雑な政治状況の中で生まれた重要な歴史的文書です。

混迷するイングランド：議会派内部の対立

第一次イングランド内戦で王党派を破った議会派でしたが、戦後、長老派と独立派の対立が激化しました。宗教政策や捕虜となった国王チャールズ1世の処遇を巡り、両派は対立。さらに、長老派がニューモデル軍の解体を企てたことで、対立は決定的となりました。

軍内部にも独立派と平等派が混在し、平等派の急進的な社会改革案は議会へのクーデターをも企てさせるほどでした。この混乱の中で、クロムウェルは軍と議会の協調を模索しながらも、次第に長老派主導の議会への不満を募らせていきます。

クロムウェルの決断と建議要目の発表

1647年3月、議会による軍解体案に反発したニューモデル軍は、5月に下士官を中心とした結束を見せます。クロムウェルは、議会から離れて軍に身を投じ、軍との協調路線を明確にしました。

軍は平等派に影響を受けつつ議会に政治改革を要求、ロンドンへ向けて進軍しますが、武力行使に反対するクロムウェルは議会との妥協を模索しました。クロムウェルの意を受けたヘンリー・アイアトンとジョン・ランバートは、軍の要求をまとめ、8月1日に「建議要目」を発表。議会の譲歩もあり、8月6日にはクロムウェルの同意を得てロンドンを占領します。流血は避けられましたが、長老派への不信は残ったままでした。

建議要目の内容：王権制限と議会の強化

「建議要目」は、王権の制限、議会の権限拡大、そして宗教の寛容を謳った憲法草案でした。主な内容は以下の通りです。

議会の改革: 長期議会の下院を解散し、新たな選挙で下院を選出すること。選挙区改正や財産に基づく選挙権の制限も提案されました。議会は2年に1回招集されることになります。
王権の制限: 王政は維持されますが、軍の統帥権や外交権は制限され、議会が軍の統帥権と官僚の任命権を掌握することになります。（10年間）
国王の顧問: 国王の政治顧問は議会が指名し（10年間）、外交権は国務会議と国王が共有することになります。（7年間）
宗教の寛容: 宗教の寛容が謳われ、教会による個人の儀式への強制や弾圧が禁止されました。ただし、カトリックは除外されました。

建議要目とパトニー討論

チャールズ1世は「建議要目」を拒絶しました。平等派も、現実との妥協を含む内容に不満を持ち、より急進的な草案「人民協定」を作成します。「建議要目」と「人民協定」はパトニー討論で提示され、兵士や平等派代表、そしてクロムウェルも加わって議論が行われました。これは、イングランドの将来をかけた重要な論戦でした。

建議要目の歴史的意義

「建議要目」は、イングランド内戦期の政治改革において重要な役割を果たしました。王権の制限、議会の権限強化、そして宗教の寛容という理念は、後の統治章典にも大きな影響を与え、イングランドの政治体制に大きな変化をもたらしました。また、この文書は、クロムウェルを含む当時の政治指導者たちの複雑な思惑と、軍と議会との微妙な力関係を示す重要な資料となっています。 ニューモデル軍の行動、クロムウェルの政治的立場、そして平等派の主張など、様々な要素が複雑に絡み合い、イングランドの未来を揺るがす出来事であったと言えるでしょう。 様々な文献を参照し、この歴史的出来事をより深く理解することが重要です。

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