建野郷三

建野郷三（たての ごうぞう）

建野郷三は、1842年1月12日（天保12年12月1日）に生まれ、1908年（明治41年）2月16日に亡くなった、幕末から明治にかけて活躍した人物です。旧名は牧野弥次左衛門といい、小倉藩士、官僚、外交官、そして実業家として多彩な足跡を残しました。

生い立ちと藩士時代

建野郷三は、豊前国京都郡延永村（現在の福岡県行橋市延永）で生まれました。その後、小倉藩士である建野建三の養子となり、「郷三」と改名しました。幕末の動乱期には、第二次長州征討に従軍し、長州藩との戦いに参加しました。この経験が、彼の後の人生に大きな影響を与えたと考えられます。

明治維新後の活躍

明治維新後、建野郷三は、新たな時代を切り開くべく、積極的に活動しました。1870年（明治3年）にはイギリスに留学し、法律学を修めました。この留学経験は、彼の国際的な視野を広げ、後の外交官としての活躍の礎となりました。

帰国後の1877年（明治10年）には、宮内省御用掛三等侍補心得に任じられ、その後、宮内権大書記官、兼太政官権大書記官を歴任しました。1879年（明治12年）には、グラント前アメリカ合衆国大統領が来日した際、接伴掛を務めました。この時期、政府の中枢で重要な役割を担い、日本の近代化に貢献しました。

1880年（明治13年）5月には、大阪府知事に就任し、約9年間その職を務めました。在任中には、大阪府と堺県の合併を実現させ、行政改革を推進しました。この功績は、大阪府の発展に大きく貢献しました。

1889年（明治22年）3月16日には、元老院議官に就任しましたが、1890年（明治23年）10月30日に元老院が廃止されたため、非職となりました。その後、1891年（明治24年）1月には、アメリカ合衆国駐箚兼メキシコ駐箚特命全権公使に着任し、1894年（明治27年）7月まで在任しました。外交官としての手腕を発揮し、日米、日墨関係の発展に尽力しました。

実業家としての活動

外交官を退任した後、建野郷三は実業家としても活動しました。唐津興業鉄道社長、神戸商業会議所会頭などを務め、日本の経済発展にも貢献しました。

栄典

建野郷三の功績は、多くの栄典によって称えられました。

1886年（明治19年）10月28日 - 従四位
1893年（明治26年）4月11日 - 正四位
1894年（明治27年）10月20日 - 従三位
1889年（明治22年）11月25日 - 大日本帝国憲法発布記念章
1892年（明治25年）6月29日 - 勲三等瑞宝章

まとめ

建野郷三は、幕末の動乱期から明治の近代化期にかけて、様々な分野で活躍した人物です。小倉藩士としての経験、イギリス留学での知識、官僚としての行政手腕、外交官としての国際感覚、そして実業家としての経営能力、そのどれもが、当時の日本を支える上で重要な役割を果たしました。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた先人たちの足跡を示すものとして、後世に語り継がれるべきでしょう。

参考資料

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞社、1994年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
* 太政官「職務進退・元老院　勅奏任官履歴原書」明治23年。国立公文書館 請求番号：本館-2A-031-09・職00149100

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