弁天台場

弁天台場の歴史と構造

弁天台場（べんてんだいば）は、江戸時代の幕末期に函館市に築かれた重要な海防施設です。この台場は、外国船からの脅威に対抗するために建設されたものであり、特に函館開港後にその存在意義が際立ちました。もともとは和式の小規模な台場であったものの、洋式技術を取り入れた大型の多角形砲台へと改築され、函館湾の防衛拠点となりました。

弁天岬の突端に位置し、函館湾の入り口を見守る形で設計されており、将棋の駒に似た不等辺六角形の形状をしています。総面積は11,611坪（約38,300㎡）で、海上全周を射角に収めるために各辺が港湾内の方向に向いています。弁天台場は高さ11.2メートル、全周712メートルの土塁で構築され、外面は石垣で被覆されています。土石は函館山から切り出され、大坂から運ばれた備前御影石が重要な部分にも使用されています。また、工事は松川弁之助や井上喜三郎といった職人によって行われました。

台場には、60ポンド砲2門、24ポンド長カノン砲13門の計15門が配備され、それぞれの砲座が堡壁で区切られて設置されています。興味深いのは、安政元年（1854年）にプチャーチンが漂流した艦載砲を一部弁天台場に寄贈したというエピソードです。これに関する記録では、24門がその後弁天台場で使用されたとされています。この砲台は、艦船を標的とする対艦砲を全周に配置した海防砲台としての構造を持ち、戦略的役割を果たしていました。

改築の背景と目的

弁天台場の改築は、幕府が直面していた海防の脆弱性に対処するために行われました。嘉永7年（1854年）には箱館が開港し、箱館の防衛が危機的状況にあったため、堀利煕がその状況を幕府に訴えました。外国船が自由に市中を行き交う中、旧態然とした和式砲台群では十分な防護が不可能であると判断されたため、海防網の強化が喫緊の課題となりました。堀は新たな御役所や台場の建設を提案し、以降弁天台場が改築される運びとなりました。

この計画の遂行には、約40万両の予算が計上され、弁天台場の改築が最初に着工されました。最初の設計図には50ヶ所の砲座が配置され、各砲座には外向きの砲眼が設けられることになっていました。しかし、予算の関係で最終的には15門の砲しか設置されなかったため、設計されたすべての機能が満たされることはありませんでした。

戊辰戦争と弁天台場の運命

弁天台場は、もともと外国からの攻撃から日本を守るために築かれましたが、実際にその力を発揮したのは内戦である箱館戦争でした。明治元年（1868年）には旧幕府軍が函館の地に上陸し、箱館戦争が勃発しました。弁天台場は旧幕府軍による防衛の拠点となり、新政府軍艦隊との激しい攻防が繰り広げられました。

戦争が進む中で、弁天台場は新政府軍の攻撃を受け続けました。最終的には、5月15日に弁天台場の守備兵は降伏することとなり、この防衛拠点の役割は終焉を迎えます。その後、開拓使の管轄となり、時間とともにその機能は失われていきました。

弁天台場の跡地には現在、函館どつくの入口に碑が建っており、明治34年には函館どつくのレンガ倉庫が建設されて現在に至っています。また、解体された弁天台場の石材は港の防波堤に再利用されており、これが後に歴史的価値を持つ遺産として認定されています。弁天台場は単なる砲台ではなく、歴史の流れの中で重要な役割を果たした地点と言えます。

もう一度検索