式場隆三郎は、
1898年に
新潟県で生まれた
精神科医です。彼は単なる医師ではなく、文芸や美術にも深い関心を持ち、その多才な活動は多くの人々に影響を与えました。
彼は、新潟医学専門学校を卒業後、医学博士の学位を取得。静岡脳病院院長などを経て、
1936年には
千葉県市川市に精神病院である式場病院を設立しました。
精神科医としての専門は
精神病理学であり、特にフィンセント・ファン・ゴッホに関心を寄せ、その生涯や作品に関する著作を多数発表しました。
式場は、早くから文芸の世界に憧れを抱いていました。雑誌「ホトトギス」を愛読し、「
白樺派」の作家たちや
柳宗悦、
民藝運動に関わる人々、バーナード・リーチなど、多くの文化人と交流を深めました。これらの交流を通して、文芸や芸術創造活動と人の精神的な問題との関わりに関心を深めていきました。
彼は、
精神科医としての活動以外にも、文化的な活動に積極的に参加しました。例えば、
東京深川に建てられた奇妙な建築物「二笑亭」についての記録「二笑亭綺譚」を著し、その歴史的価値を後世に伝えました。また、裸の大将として知られる
山下清の才能に早くから注目し、その活動を物心両面から支え、世間に広く紹介したことは、障害児教育に大きな影響を与えました。
さらに、作家の三島由紀夫も、式場の著作を読んでおり、彼宛の手紙の中で、自身の作品『
仮面の告白』が、自身の体験に基づいた事実を忠実に記述したものであると告白しています。また、三島の作品『
サド侯爵夫人』や『夜の向日葵』は、式場の著作から題名を借りています。
式場は、スポーツ分野でも活躍しました。第二次世界大戦後の1946年に
日本ハンドボール協会が復活設立された際には、会長に就任し、19年もの長きにわたり、ハンドボールの普及と発展に尽力しました。
彼の家族もまた、様々な分野で活躍しています。父は教員、弟は編集者、甥はレーシングドライバー、叔父は歌人、長女は翻訳家、長男は
精神科医というように、多才な家族構成であったことも彼の活動に影響を与えたと言えるでしょう。
式場の著作は多岐にわたります。ゴッホに関する著作の他、『二笑亭綺譚』、『
サド侯爵夫人』など、文学や芸術に関する著作も多く残しました。また、
山下清の画集を編纂するなど、美術分野にも貢献しました。これらの著作は、彼の多才さと深い知識を示すとともに、後世の人々にも大きな影響を与えています。
式場隆三郎は、
精神科医、文筆家、芸術愛好家、スポーツ振興家として、多方面で活躍した人物です。彼の足跡は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。