式見村

式見村（しきみむら）

式見村は、日本の高度経済成長期にあたる1962年（昭和37年）まで、長崎県の西彼杵半島に存在した村です。当時、この村は西彼杵郡に属していました。同じ日に隣接する茂木町とともに長崎市に編入される形で自治体としては消滅し、その歴史に幕を下ろしました。現在、かつての式見村の領域は、長崎市の行政区画である式見地区としてその名をとどめています。

地理と自然環境

地理的には、西彼杵半島の南西部に位置しており、村の南西側の海岸線は角力灘（すもうなだ）に広く面していました。この地域は、山と海が織りなす豊かな自然景観が特徴です。村内には、飯盛岳（いいもりだけ）、矢筈山（やはずやま）、舞岳（まいだけ）といった複数の山々がそびえ、起伏に富んだ地形を形成しています。海岸線に近い場所には神楽島（かぐらじま）という島影も見られ、海辺の景観に趣を添えています。また、村域を流れる河川としては、式見川や相川があり、これらの水源は地域の生活を支えていました。角力灘に面した式見漁港は、この地域の産業において重要な役割を果たしていたと考えられます。

地名の由来について

「式見」という地名の起源に関しては、古くからいくつかの説が伝えられています。室町時代に編纂された『大村郷村記』などの歴史文献においては、この地が「樒」（しきみ）や「志幾見」（しきみ）といった漢字で表記されていることが確認できます。地名の由来に関する一般的な説の一つは、村内に香木としても知られる植物のシキミ（樒）が多く自生していたことにちなむというものです。もう一つの説は、地形的な特徴に着目したものです。古語において「シキ」は砂礫（されき）の多い土地や敷地を、「ミ」は水辺や海を指す言葉であり、これらの言葉が組み合わさって長い年月の間に転訛（てんか）し、「シキミ」という音になったという考え方です。いずれの説も、この地域の自然環境や土地の様子と深く結びついていることを示唆しています。

村の行政区画と沿革

近代的な地方自治制度が導入される過程で、式見村は単独の自治体として発足しました。1889年（明治22年）4月1日、町村制の施行により、それまでの式見村域をもって改めて西彼杵郡式見村が設置されました。この際、村内には一般的な大字（おおあざ）という区分は設けられず、歴史的に用いられてきた郷（ごう）が主な行政区域として機能しました。式見村を構成していた郷は、相川郷（あいかわごう）、田舎郷（いなかごう）、大崎郷（おおさきごう）、木場郷（こばごう）、本村郷（ほんむらごう）、牧野郷（まきのごう）、向郷（むかいごう）の七つです。これらの郷名は、長崎市に編入された後も地名として引き継がれている地域があります。式見村は、1889年の発足から1962年（昭和37年）1月1日に長崎市に編入されるまで、約73年間にわたり自治体としての歴史を歩みました。

（注：本記事は提供された情報を基に記述しています。）

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