弘道館 (佐賀藩)

弘道館：佐賀藩が誇る人材育成の府

弘道館は、江戸時代に佐賀藩によって設立された藩校であり、水戸藩、出石藩の藩校と並んで「天下三弘道館」の一つとして知られています。佐賀藩における教育の中心地として、多くの人材を輩出してきました。

設立の経緯

1781年（天明元年）、佐賀藩第8代藩主である鍋島治茂が、儒学者の古賀精里に命じて佐賀城に近い松原小路に藩校「弘道館」を設立しました。この設立にあたっては、熊本藩の藩校「時習館」がモデルとされ、鍋島治茂は石井鶴山を熊本藩に派遣し、改革と藩校の関係を学ばせました。石井鶴山は、幕臣の大田南畝や広島藩の頼春水など、多くの学者と交流を深め、見識を広めました。

教育の充実

1806年（文化3年）には、古賀精里の子である古賀穀堂が、教育予算の増額を提言する意見書『学政管見』を提出し、教育の重要性を訴えました。1830年（天保元年）には、第10代藩主となった鍋島直正が弘道館の充実を指示し、1840年（天保11年）には北堀端に移転拡充し、15歳以下の藩士の子弟を教育する蒙養舎を設立しました。これにより、教育予算は大幅に増加し、弘道館の教育体制はさらに強化されました。

幕末から明治にかけての活躍

弘道館は、幕末から明治にかけて活躍した多くの人材を輩出しました。副島種臣、大木喬任、大隈重信、佐野常民、江藤新平、島義勇らは弘道館の出身者であり、明治維新後の日本を支える原動力となりました。弘道館の教育理念は、旧制佐賀中学校（現・佐賀県立佐賀西高等学校）や勧興小学校（現・佐賀市立勧興小学校）に受け継がれています。

年表

1691年（元禄4年）：佐賀藩第2代藩主鍋島光茂が佐賀二の丸に「鬼丸聖堂」を設立。
1697年（元禄10年）：佐賀藩第3代藩主鍋島綱茂が聖堂を観頤荘内に移転。
1781年（天明元年）：佐賀藩第8代藩主鍋島治茂が松原小路に藩校「弘道館」を設立。
1806年（文化3年）：古賀穀堂が意見書『学政管見』を提出。
1830年（天保元年）：第10代藩主になった鍋島直正が弘道館の充実を指示。
1834年（天保5年）：鍋島直正の藩政改革により医学館医学寮創設
1840年（天保11年）：鍋島直正が北堀端に移転拡充し、「蒙養舎」を設立。
1846年（弘化3年）：聖堂を弘道館に移転。
1851年（嘉永4年）：弘道館内に医学寮蘭学寮設置。
1872年（明治5年）：明治新政府の学制改革により弘道館が一旦廃止。
1874年（明治7年）：弘道館の初等教育部が、勧興小学校（現・佐賀市立勧興小学校）として復活・開校。
1876年（明治9年）：弘道館の中等教育部が、弘道館跡に佐賀変則中学校（現・佐賀県立佐賀西高等学校）として復活・開校。
1895年（明治28年）：弘道館跡にあった校舎を旧佐賀城内西地区に移転。
1914年（大正3年）：勧興尋常小学校が北堀端から佐賀市成章町へ移転。

現代における弘道館

現代においても、佐賀県は弘道館の名を冠した様々なイベントを展開しています。しかし、商標権を巡り、鍋島氏子孫と佐賀県との間で訴訟になっていることが報道されています。

跡地の活用

弘道館の跡地は、佐賀市役所の敷地として使用された後、県有地となり、「くすかぜ広場」として供用されていましたが、2022年5月14日に「ARKS」としてリニューアルされました。現在もその精神は佐賀の地に息づいています。

弘道館は、佐賀藩の教育における重要な拠点であり、多くの人材を育成し、日本の近代化に貢献しました。その歴史と精神は、現代においても受け継がれ、佐賀の地に深く根ざしています。

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