張信

張信（ちょう しん）

張信は、明代初期に活躍した軍人です。彼の生涯は、初期明朝の政治的な激動と深く関わっており、その功績と過ちは、明朝の歴史を語る上で重要な要素となっています。

生い立ちと初期のキャリア

張信の生年は明確にはわかっていませんが、本貫は泗州臨淮県です。彼は父の張興の官を継ぎ、永寧衛指揮僉事となりました。その後、普定や平越での守備を経て、その功績が認められ都指揮僉事に昇進しました。この時期の張信は、地方の守備官として着実にキャリアを積んでいたと言えるでしょう。

建文帝の密詔と苦悩

1398年、建文帝が即位すると、張信は大臣の推薦により北平都指揮使司に任命されました。翌年、彼は建文帝の密詔を受け、張昺や謝貴とともに燕王朱棣を陥れるという重大な任務を負うことになります。しかし、この密詔を受けた張信は深く苦悩しました。彼は、自身の父が常々「王気は燕にある」と語っていたことを思い出し、軽挙妄動が家族を滅ぼすことを恐れたのです。

朱棣への密告と蜂起

張信は、燕王邸を三度訪れても朱棣に会ってもらえませんでしたが、最終的に床下を這って邸に入り、朱棣に密詔の内容を伝えました。この密告によって、朱棣は蜂起を決意し、諸将を集めて計画を立て、遂に挙兵して九門を奪取しました。この行動は、後の永楽帝となる朱棣が皇帝の座を勝ち取る上で、非常に重要な転換点となりました。

隆平侯への封爵と栄華

1402年、朱棣が南京に入り、皇帝として即位すると、張信はその功績を認められ都督僉事に進み、隆平侯に封じられました。さらに、1000石の禄を賜り、侯爵を世襲する権利も与えられました。永楽帝は張信を深く信頼し、「恩張」と呼んでいました。また、張信の娘を後宮に入れようとしたほどでしたが、張信が固辞したことで、皇帝の信頼はさらに増したと言われています。藩王の動静や密事を調べる重要な任務も張信に任されました。

驕慢な振る舞いと失脚

しかし、永楽帝の信任を背景に、張信は次第に驕慢な振る舞いが目立つようになりました。1410年、都御史の陳瑛は、張信が丹陽練湖の広大な土地や江陰の官田を強引に占有していることを糾弾しました。永楽帝は、過去の功績を認める一方で、その傲慢な態度を戒め、法司に調査を命じました。張信は一時失脚したものの、以前の功績により罪を問われることはありませんでした。

再び戦場へ

1422年、張信は永楽帝の第三次漠北遠征に従軍し、糧食の運搬を監督しました。しかし、閲兵の際に病気を理由に参加しなかったため、弁事官に左遷されました。その後、復職を果たしましたが、この事件は彼の晩年における波乱を象徴しています。

その後と死

1424年、洪熙帝が即位すると、張信は少師の位を加えられ、二官分の俸給を支給されました。また、侯爵を世襲する権利も再び与えられました。その後、漢王朱高煦の乱に対する征討にも参加し、宣徳帝の親征の際には北京の留守を任されました。1429年には、黄河の浚渫を監督しました。張信は1444年5月に南京で死去し、鄖国公の爵位を追贈され、恭僖という諡号が贈られました。

子孫

張信の子である張鏞は、自ら功を立てて指揮僉事となりましたが、張信に先立って亡くなりました。張鏞の子、張淳が隆平侯の爵位を継ぎ、その爵位は明の滅亡まで子孫に伝えられました。

張信の生涯は、明朝初期の政治的な激動と深く関わっており、その功績と過ちは、明朝の歴史を語る上で重要な要素となっています。

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