張問達

張問達（ちょう もんたつ）：明末の政治家

張問達（1554年 - 1625年）は、明代末期の官僚・政治家です。字は徳允、本貫は西安府涇陽県です。彼は、明朝末期における重要な政治事件である「梃撃の案」「紅丸の案」「移宮の案」のすべてに関わり、その処断に深く関与しました。その生涯は、当時の政治的混乱を色濃く反映しています。

生い立ちと官僚としてのキャリア

張問達は、張汝騋と韓氏の間に生まれました。1583年（万暦11年）に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせます。高平知県、濰県知県を歴任し、その善政は広く知られていました。その後、北京に召還され、刑科給事中に任じられました。1592年（万暦20年）に寧夏で哱拝の乱が起こると、張問達は陝西の賦税を免除するよう請願し、これが聞き入れられました。父の死により一時辞職しましたが、喪が明けると元の職に復帰しました。

工科左給事中に転じた後、万暦帝による乾清宮と坤寧宮の再建計画に対し、宦官の投機的な動きを批判しました。彼は事業の中止を求めましたが、受け入れられませんでした。その後も鉱税の弊害を訴え、宦官を非難し続けました。1600年（万暦28年）には山東での郷試を担当し、飢饉と流民の状況を報告、鉱税廃止を求める上疏も行いましたが、これもまた却下されました。

内府の調達を担う商人（僉商）が、万暦帝の側近に賄賂を贈り調達義務を免除されていた事実を問題視し、2度にわたり上疏しましたが、状況は改善されませんでした。1602年（万暦30年）、李卓吾が邪説で民衆を惑わしていると弾劾し、李卓吾は逮捕され獄死しました。

主要な事件への関与

1604年（万暦32年）には太常寺少卿に転じ、1607年（万暦35年）には右僉都御史として湖広巡撫に就任。湖広では洪水の被害が甚大であったため、債務の減免をたびたび請願しました。万暦帝が三殿の営建のために湖北湖南の木材を伐採させると、困窮する民衆を救済しました。1614年（万暦42年）に北京に召還され、刑部右侍郎に任命され、刑部尚書の事務を代行しました。

1615年（万暦43年）に発生した「梃撃の案」では、皇太子朱常洛を襲撃したとされる張差の尋問を担当しました。張問達は、刑部の十三司に集団で尋問させ、鄭貴妃の宮監である龐保と劉成が犯行に関与していたとの証言を得ました。しかし、万暦帝は龐保と劉成の名を見ると上奏文を留め置き、事態は混迷しました。最終的に、張差は処刑され、龐保と劉成は宮中で密かに殺害され、この事件はうやむやにされました。この事件後、張問達は都察院事を解任されました。

1618年（万暦46年）に戸部尚書に転じ、1619年（万暦47年）に刑部尚書を兼務。1620年（万暦48年）に左都御史に任命されました。同年、泰昌帝の病が重篤となると、その遺命を受けました。

1621年（天啓元年）には吏部尚書に任命され、万暦年間に失脚した75人の官僚の名誉を回復しました。また、泰昌帝の服毒事件「紅丸の案」では、方従哲を非難しました。さらに、天啓帝の即位に関わる「移宮の案」では、李可灼と崔文昇を法司に下すよう求めました。

失脚と名誉回復

任期を満了後、太子太保の位を加えられましたが、13回にわたって帰休を願い出ました。1623年（天啓3年）には少保の位を加えられ致仕、帰郷しました。

しかし、1625年（天啓5年）に魏忠賢が権力を掌握すると、張問達は王之寀を引き立てて党派を形成したと弾劾され、官爵を剥奪されました。さらに、不正な財産を隠匿していると誣告され、財産10万を官に納めるよう命じられました。その後、まもなく死去しました。享年72歳。

陝西巡撫の張維枢の弁護により、献納義務は半分免除されましたが、家は破産しました。1628年（崇禎元年）に名誉を回復され、太保の位を追贈されました。

著書

著書に『易経弁疑』7巻があります。


張問達は、明末の混乱期において、その清廉な精神と大胆な行動で知られていました。しかし、晩年は政敵の讒言により失脚し、悲劇的な結末を迎えました。彼の生涯は、明朝末期の政治腐敗と権力闘争の激しさを物語っています。

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