張昌

張昌（李辰）の反乱：西晋を揺るがした一瞬の光芒

張昌（ちょうしょう、? - 304年）は、西晋時代に荊州義陽郡で発生した反乱の首魁です。彼は後に李辰（り しん）と改名し、その短い生涯において、西晋王朝を大きく揺るがすほどの勢力を築き上げました。

平氏県の役人から反乱の首魁へ

張昌は若い頃、平氏県の役人として働いていました。彼は武力に長けており、自らを占卜して「いずれ富貴になる身だ」と豪語するなど、野心家であったと伝えられています。しかし、仲間からはその言動を失笑されることもあったようです。

301年、益州には秦州・雍州からの流民が溢れていました。朝廷は彼らを故郷に帰還させるため、張昌に監督を命じました。この頃から、張昌は密かに反乱の機会を伺っていたと考えられます。

反乱の狼煙

303年、李流が益州に侵攻すると、張昌は半年間姿をくらまし、その間に数千人の徒党を組織しました。彼は軍旗を盗み出し、朝廷の命と偽って李流討伐の名目で兵を集めました。当時、八王の乱で国内が混乱していたため、人々の間には「帝王が江東に興る」という予言が広まっており、西征への協力は消極的でした。張昌はこのような状況を利用し、虚言で人々を惑わし、勢力を拡大していきました。

安陸県の石岩山に拠点を構えた張昌は、姓名を李辰と改めました。彼の元には、各地の流民や労役から逃れてきた人々が集まり、その勢力は日に日に増大していきました。江夏郡太守の弓欽が討伐軍を差し向けましたが、張昌はこれを撃退。さらに勢力を拡大し、ついには郡を相手にできるほどになりました。

聖人の出現と漢王朝の再興

張昌は、「聖人が現れ、民百姓を導くだろう」という妖言を広めました。そして、山都県吏の丘沈を江夏に招き入れ、彼を聖人として祭り上げ、劉尼（りゅう じ）と改名させ、漢王朝の後継者として天子に担ぎ上げました。張昌は自ら相国に就任し、兄の張味を車騎将軍、弟の張放を広武将軍に任命し、軍を統率させました。

石岩山中に宮殿を造営し、鳳凰が舞い降りたと詐称するなど、様々な策略を用いて人心を掌握しました。そして、赦書を下して「神鳳」と建元し、祭祀や服色は漢の故事に倣いました。募兵に応じない者は一族皆殺しにするなど、恐怖政治も行いました。

五州を席巻する勢力へ

張昌の勢力は急速に拡大し、荊州、江州、徐州、揚州、豫州の五州を恐怖に陥れました。彼は各地に守長を置き、州牧や太守を立てましたが、その多くは盗賊や小人で、略奪を繰り返しました。そのため、徐々に人々の支持を失っていきました。

滅亡への道

朝廷は劉弘を寧朔将軍・領南蛮校尉に任命し、宛城の統治を任せました。劉弘は陶侃らを派遣し、竟陵にいる張昌を攻撃させました。張昌は陶侃軍と連日にわたって死闘を繰り広げましたが、遂に支え切れず敗北し、下儁山へと逃亡しました。

304年8月、張昌は荊州兵に捕えられ処刑され、その首は京師に晒されました。徒党も三族皆殺しにされ、その反乱は終焉を迎えました。

張昌の反乱は、西晋王朝末期の社会不安と、八王の乱による中央政府の弱体化を象徴する出来事でした。彼の反乱は短期間で鎮圧されましたが、その影響は大きく、西晋の衰退を加速させる一因となりました。

参考文献
* 『資治通鑑』 第85巻　晋紀7

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