張湯

張湯（ちょう とう）

張湯は紀元前116年まで生きた前漢の人物であり、京兆尹杜陵県（現在の陝西省西安市に位置）の出身とされます。彼はその厳格さから酷吏として名を馳せる一方、父親の死後は官吏としての道を歩み始めました。張湯は、彼のもとで教えを受けた周陽侯との出会いを契機に、官職へと昇進していきました。

幼少期と官吏への道

張湯の父は長安県の丞であり、小さい頃から厳格に育てられました。幼少期、張湯が留守番をしている時、ネズミに肉を食べられたことから、父に厳しく叱責されます。張湯はネズミを告発し、その取り調べを行うことで、文書を作成し、逆にネズミを磔にするという行動に出ました。このような幼少期の経験が、彼の後の官吏としての活躍につながったのかもしれません。

父の死後、張湯は長安の吏となり、その後は内史の寧成の下で働き、彼の優秀さが認められ丞相府に推薦されました。このように、彼の経歴の初めから実力を示し、少しずつ昇進していったのです。

徹底した取り調べと法治の推進

張湯は武安侯田蚡のもとで丞相史として活躍し、陳皇后の巫蠱について詳細に取り調べました。その結果、皇帝武帝から有能な官吏として評価され、太中大夫に昇格しました。彼は当時の法律を重視し、法治を徹底することに努めました。元朔3年に廷尉に任命された後も、立法活動に積極的に関与しました。

彼は知恵を駆使し、幅広い人脈を築くことで名声を得ました。下級官吏時代には豪商と付き合い、廷尉になった後は名士との交流を深めました。これは彼が立場にかかわらず、様々な人と関係を築く術を心得ていたことを示しています。特に、武帝の治世下においては儒学を重んじる政策を受け入れ、法令の決定に貢献しました。

張湯の政策と評価

武帝は彼に国政に関する提言を求め、武帝が抱える問題に対して張湯の意見は大いに重視されました。張湯は白金や五銖銭の鋳造、塩鉄専売化、豪商の取り締まりなど、国を救う政策を提言し、これにより国家財政の改善を試みました。しかし、彼の政策は時には混乱を招く結果にも繋がり、大臣や庶民からも批判を受けることがありました。

一方で、張湯は武帝からの信任が厚く、彼の病気の際には武帝自ら見舞うほどの親密さを持っていました。このような特別扱いは、彼の政治家としての力量を示す証でもあります。

最期とその影響

しかし、その後彼の運命は急変します。元鼎2年に、張湯は失脚を余儀なくされ、自ら命を絶つことになりました。自殺に至る過程の中で、彼は自らを陥れた者たちの名を挙げて遺書を残し、その後、彼を陰で操っていた者たちは処罰される運命に見舞われます。

張湯の死後、彼の近親者であった張安世は高い地位に昇進し、彼の後を継ぐいわれます。張湯の影響は、後世にわたり家族やその子孫に続き、彼の名は歴史に名を刻むことになります。張湯の生涯は名声と悲劇に満ちており、前漢時代の重要な人物として記憶されています。

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