張籌

張籌（ちょう ちゅう）は、明朝初期に活躍した官僚であり、字を惟中と称しました。彼の生没年ははっきりとは分かっていませんが、本貫は常州無錫県です。張籌は、元末に江浙省試で首席となるほどの学識の持ち主であり、その才能は早くから注目されていました。

出世と礼制への関与

1371年（洪武4年）、張籌は詹同の推薦を受け、翰林院応奉に任じられ、その後、礼部主事に転じました。この頃、洪武帝の命により、礼部尚書の陶凱と共に、漢唐以来の藩王の事跡をまとめた『帰鑑録』の編纂に携わりました。この編纂事業は、明朝の統治において藩王のあり方を定める上で重要な役割を果たしました。

1373年（洪武6年）には、広東参政に任命され、地方行政にも携わることになります。しかし、1376年（洪武9年）には再び中央に戻り、礼部員外郎から礼部尚書へと昇進しました。この時、学士の宋濂とともに、諸王妃の喪服の制を定めるという重要な職務を担いました。張籌は、歴代の礼楽儀制を暗記していたと言われていますが、その解釈には独断的な部分も多く、議論を呼ぶことになります。

礼制改革と批判

張籌の礼制に関する改革は、当時の識者から多くの批判を浴びました。彼は、社稷の祭壇を一つにまとめ、句龍の祭祀を廃止し、神の配偶者の位を剥奪するなどの改革を強行しました。さらに、洪武帝の父である朱五四を社稷と郊廟の祭祀に合祀し、それらを上祀に並列するという大胆な措置も行いました。これらの改革は、当時の礼制に大きな変革をもたらしましたが、多くの識者からは伝統を無視した附会であると非難されました。

失脚と再起

張籌の独断的な行動は、彼の官僚としてのキャリアに暗い影を落とすことになります。礼部尚書としての職務中に、ほどなくして湖広参政として地方に左遷されました。1377年（洪武10年）には、ある事件に連座して労役刑を科せられます。しかし、彼の才能は完全に埋もれることはなく、1379年（洪武12年）4月には礼部員外郎として再び中央に復帰しました。さらに同年9月には、再び礼部尚書に任命されましたが、ほどなくして別の事件に巻き込まれ、最終的には免官となりました。彼の再三の復帰と失脚は、当時の政治状況の複雑さを物語っています。

まとめ

張籌は、その生涯において、礼制の専門家として重要な役割を担いながらも、その独断的な解釈によって批判を浴びた人物でした。彼の経験は、伝統と革新の狭間における官僚の難しさを私たちに教えてくれます。彼の功績と過ちの両面を理解することで、明代初期の政治と文化に対する理解を深めることができるでしょう。

参考文献：
* 『明史』巻136 列伝第24

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