張静江

張静江（ちょう せいこう）

張静江（ちょう せいこう、1877年9月19日 - 1950年9月3日）は、中華民国の政治家であり、実業家としても名を馳せました。彼の名は増澄、字は人傑ですが、一般には字の静江として広く知られています。中国同盟会時代から革命運動に身を投じ、後に中国国民党や国民政府の要職を歴任しました。また、浙江財閥を率いる指導者の一人としてもその手腕を発揮しました。

生涯と業績

革命運動への財政支援

浙江省湖州府南潯の裕福な資産家の家庭に生まれた張静江は、1902年（光緒28年）に駐仏公使の孫宝琦に随行してパリに赴任し、公使館商務随員に任命されました。翌年には帰国して資金を調達し、再びフランスに戻り、貿易会社「通運公司」を設立しました。この会社は中国の骨董品などを販売し、ロンドンやニューヨークにも支店を設立するほどの成功を収めました。

海外滞在中、張静江は様々な新しい思想に触れ、次第に反清、無政府主義への傾倒を深めていきました。呉敬恒（呉稚暉）や李石曽と共にパリで世界社を設立し、『新世紀周報』、『世界』（美術画報）、『新世紀叢書』などを出版し、科学と無政府主義の普及に尽力しました。

1906年（光緒32年）、旅行中に偶然孫文と出会い、意気投合した張静江は、以後、孫文の革命活動を資金面から支援しました。彼の送金は、中国同盟会にとって貴重な資金源となりました。張自身も同年、帰国途中のシンガポールで同盟会に加入しています。

辛亥革命の際にも、張静江は革命派のために資金援助や兵器調達に奔走しました。孫文が臨時大総統に就任すると、張は財政部長への就任を要請されましたが、固辞しています。1913年（民国2年）の二次革命（第二革命）では、陳其美らの蜂起を支援しましたが、敗北に終わり日本へ亡命しました。亡命後も孫文を支援し、中華革命党が組織されると財政部長に就任しました。

その後も、孫文らの革命活動を財政面で支え続けました。中国国民党の成立と共に中央執行委員に選出され、後には中央監察委員にも選ばれました。これらの功績により、国民党の人士からは「革命聖人」と称えられ、孫文からも深く感謝されました。ただし、張自身は孫文の三大政策には反対の立場を取っていました。

蔣介石との関係と晩年

1925年（民国14年）3月の孫文の死後、張静江は以前から親交のあった蔣介石に接近し、清党活動（共産党排除活動）に尽力しました。南京に国民政府が成立した後の1927年（民国16年）7月には、全国建設委員会委員長に就任し、さらに初代浙江省政府主席を兼任しました。同年10月、省政府主席の地位を一旦何応欽に譲りましたが、1928年（民国17年）11月には再び主席に再任されました。

張静江は、鉄道建設や公道整備、電力事業など、孫文が提唱した「実業計画」の実現に尽力し、一定の成果を上げました。しかしその一方で、これらの事業を展開するための資金を調達するために、省民への課税は多岐にわたり、その負担は大きなものとなりました。

蔣介石の先輩格であることを自負していた張静江は、次第に国民政府中央の法令に従わなくなり、独断専行の省政を進めるようになりました。これが蔣介石との対立を招き、1930年（民国19年）12月4日、国民政府中央の命令により浙江省政府は改組され、張は主席を事実上罷免されることとなりました。

全国建設委員会委員長としても、委員会の実業部門の権限は徐々に剥奪されていきました。1931年（民国20年）11月に宋子文を委員長とする全国経済委員会が成立すると、全国建設委員会はますます有名無実化していきました。そして1938年（民国27年）には、全国建設委員会自体が蔣介石の命令により廃止されました。失意のうちに張静江はニューヨークへ移住し、事実上引退しました。

1950年（民国39年）9月3日、ニューヨークにて病没。享年74歳でした。

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