弾正台 (明治時代)

弾正台とは

弾正台は、明治2年（1869年）に太政官制のもとで設置された明治新政府の省庁です。前身である刑法官監察司から監察の職務を引き継ぎましたが、明治4年（1871年）に司法省が新設されたことで、わずか2年余りで廃止されました。

弾正台の設置

弾正台は、政府内の不正や規律違反を取り締まる監察機関として、刑法官監察司に代わって設置されました。東京の本台に加え、京都には留守官として支台が置かれました。長官には九条道孝、次官には池田茂政が任命され、その下には大忠、少忠、大疏、少疏、巡察といった役職が置かれました。組織の改編も行われ、明治2年7月には、役職の増設や名称の変更が加えられています。実務上の最高責任者である弾正大忠には、吉井友実、門脇重綾、安岡良亮、河田景与、海江田信義、渡邊昇らが名を連ねました。

尊攘派の拠点としての弾正台

弾正台の設立には、新政府が抱える尊攘派の不満分子を懐柔する目的がありました。しかし、尊攘派が多く採用された結果、弾正台は新政府の開国政策に反対することが多く、他の官庁との対立を深めます。もっとも、監察機関としての権限は小さく、弾正台の尊攘派は、各省の幹部の不正を暴くという名目で政敵を攻撃する程度のことしかできませんでした。

明治4年（1871年）には、神戸でキリスト教の禁教を犯した罪で市川栄之助が逮捕される事件が起こりました。弾正台に送られた市川は拷問を受け、キリスト教信者であるか否かの取り調べを受けた後、弾正台廃止後の明治5年（1872年）に獄中で処刑されました。しかし、公式には牢死として発表されています。

粟田口止刑事件

弾正台は、設置前後に起こった横井小楠と大村益次郎の暗殺事件において、取り締まるべき立場の海江田信義や古賀十郎らが、横井や大村の政策を非難し、暗殺は自業自得であると主張しました。海江田は、大村襲撃犯の処刑執行を直前で差し止めるという「粟田口止刑事件」を起こし、新政府内部で問題視されました。明治3年（1870年）には、古賀ら過激な大巡察9名が免官となり、政府による尊攘派の切り捨てが本格化、弾正台自体も刑部省への統合が決定されました。

弾正台の廃止

弾正台は、明治4年7月9日（1871年8月24日）に、刑部省との統合によって新設された司法省の発足に伴い、廃止されました。短命に終わった弾正台でしたが、明治初期の政治情勢や尊攘派の動向を知る上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

関連項目

* 留守官：東京奠都期に京都に設けられた官庁。保守派公家の拠点となりました。

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