池田茂政

池田茂政（いけだ もちまさ）

池田茂政は、幕末に備前岡山藩の第9代藩主を務めた人物です。岡山池田家宗家の11代目であり、最終的な位階勲等は従一位勲二等にまで昇りました。

生涯

茂政は、天保10年（1839年）に常陸水戸藩主・徳川斉昭の九男として、水戸藩の江戸屋敷で生まれました。幼名は九郎麿と名付けられ、後に父・斉昭から偏諱を授かり、昭休（あきやす/あきよし）と名乗るようになります。

嘉永元年（1849年）には、忍藩主・松平忠国の養子となり、忠矩（ただのり）と改名。嘉永3年（1851年）には従四位下・民部大輔に叙任され、同年12月には侍従に任官しました。安政3年（1857年）には溜間詰となりますが、安政6年（1859年）に父・斉昭が安政の大獄によって処罰を受けると、幕府の顔色を窺った忠国によって廃嫡され、水戸徳川家へ復籍することとなりました。

文久3年（1863年）には、岡山藩主・池田慶政の婿養子となり、池田修政（のぶまさ/ながまさ）と名乗ります。同年、慶政の隠居により家督を継承しました。この背景には、当時の岡山藩が尊皇攘夷か否かで藩論がまとまらず、慶政が藩士・江見陽之進の進言を受け、尊攘派の盟主であった斉昭の子を家督に据えることで藩論を統一しようとした意図があったとされています。藩主就任時には、14代将軍・徳川家茂から偏諱を授かり、諱を茂政に改めました。

藩主となった茂政は、父・斉昭の影響を受け、尊王攘夷を主張し藩論を主導するとともに、兄である鳥取藩主・池田慶徳と協力して朝廷と幕府の間を奔走しました。彼の立場は、尊王攘夷の貫徹と「天皇優位の公武合体」の実現を望むものでした。そのため、将軍が朝廷の意向を尊重し攘夷を実行することを期待し、文久3年8月には、池田慶徳、米沢藩主・上杉斉憲、徳島藩世子・蜂須賀茂韶と共に参内し、当時真木和泉らが計画していた攘夷親征の中止を奏上しました。

一方で、長州藩に対しては友好的な姿勢を示し、八月十八日の政変で長州藩を中心とする尊攘派が京都から追放された際には、朝廷に対し長州藩への寛大な処置を懇願しました。また、元治元年2月にも、朝廷に毛利敬親・広封父子の寛宥を求め、幕府に対しては攘夷の勅命を勧告しました。しかし、こうした長州藩への周旋が、岡山藩が長州藩と結び幕府に対抗しようとしているのではないかという疑念を幕府に抱かせることとなります。このような状況下で、茂政は長州藩の違勅行為には反対し、諫めましたが、この態度が藩内の過激な尊攘派から、優柔不断であると批判されることもありました。

禁門の変後、茂政は長州藩への周旋を断つに至ります。第一次長州征討に際しては、長州藩への寛大な処置を主張しましたが、勅命遵守の立場から、名目的に一宮付近まで出馬し、家老・池田出羽を広島へ派遣するに留めました。第二次長州征討では、家臣の多くが出兵に反対し、茂政自身も同様でしたが、最終的には違勅の名を恐れ、渋々備後路まで出兵することとなりました。

慶応3年（1867年）の大政奉還に伴い、朝廷から元尾張藩主・徳川慶勝らと共に上洛を命じられます。王政復古の大号令後の慶応4年（1868年）には、15代将軍であった兄・徳川慶喜追討の勅命が下され、岡山藩も東征軍に参加するよう命じられました。しかし、慶喜の弟である茂政は、兄を討つための討伐軍に加わることを良しとせず、3月15日に朝廷に対し病を理由に隠居・養子届けを提出し、家督を鴨方藩主であった養嗣子の池田章政に譲り隠居しました。

維新後は弾正大弼に任じられ、能楽の復興に尽力しました。明治32年（1899年）に61歳で亡くなり、神号は五十武彦茂政命。墓所は岡山県備前市の和意谷池田家墓所にあります。

経歴

文久3年（1863年）
2月8日：備前岡山藩主及び池田家家督相続
3月10日：従四位下に叙位。侍従に任官。備前守を兼任
元治元年（1864年）2月24日：従四位上に昇叙し、左近衛権少将に転任。備前守如元
慶応4年（1868年）
3月15日：致仕
4月25日：武蔵守に任替。左近衛権少将如元
明治2年（1869年）
9月24日：明治政府の弾正大弼に任官
10月1日：従三位に昇叙
明治3年（1870年）7月13日：弾正大弼を辞任
明治4年（1871年）3月27日：麝香間祗候に遇せられる
明治5年（1872年）5月19日：西国巡幸留守中宮内省勤番
明治12年（1879年）6月17日：正三位に昇叙
明治14年（1881年）7月16日：勲三等に叙勲。旭日中綬章を受章
明治20年（1887年）12月26日：従二位に昇叙
明治25年（1892年）7月5日：正二位に昇叙
明治32年（1899年）2月11日：従一位と勲二等に昇叙し、瑞宝章を受章

系譜

父：徳川斉昭（1800年 - 1860年）
母：松波貞子
養父：松平忠国（1815年 - 1868年）、池田慶政（1823年 - 1893年）
正室：萬寿子 - 池田慶政の長女
生母不明の子女
男子：池田勝吉 - 岳父に伯爵上杉茂憲。娘婿に子爵久世広英（子爵久世広業長男）
男子：西尾勝順
次女：鄰子 - 渋沢正雄室
四女：恒子 - 堀河護麿室
五女：隆子 - 中川久任室
女子：信子 - 佐々木祐哲室
女子：鎮子 - 泉谷祐勝室
養子
男子：池田章政（1836年 - 1903年） - 相良頼之の次男

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