河田景与

河田景与：激動の時代を生きた武士の生涯

河田景与は、1828年（文政11年）に鳥取藩士の子として生まれました。代々鳥取藩の伏見留守居役を務めた河田家は、家柄も良く、景与も幼少期から剣術の鍛錬に励みました。一刀流剣術を修めた後、大石神影流も学んでいます。

尊王攘夷運動への関与

成長した景与は尊王攘夷思想に傾倒し、藩内の尊王攘夷派の中心人物として活躍します。1863年（文久3年）には京都留守居を兼務し、長州藩の桂小五郎（木戸孝允）らと交流を深め、尊王攘夷運動に積極的に関与しました。鳥取藩主・池田慶徳が尊攘派の重鎮であった水戸藩主・徳川斉昭の五男であったことも、藩全体が尊攘運動に傾く一因となりました。

当時、京都では尊攘派による攘夷親征や大和行幸が計画されており、朝廷内の過激公卿と連携した活動が活発に行われていました。しかし、幕府を支持する孝明天皇はこうした動きを危惧し、薩摩藩や会津藩の兵力を背景に八月十八日の政変が勃発。長州藩や尊攘派の公卿は京都から追放されました。

鳥取藩においても、河田を中心に攘夷運動が高まっていましたが、藩内の公武合体派との対立は深刻でした。1863年8月17日、河田は同志とともに、公武合体派の重臣らを襲撃する本圀寺事件を引き起こします。

政変後も河田は親長州派として各勢力との間を取り持とうとしましたが、1864年（元治元年）、長州藩が禁門の変を起こすと、長州藩に通じたとして処罰され、幽閉されることとなります。1866年（慶応2年）、第二次幕長戦争において長州軍が勝利すると、河田は同志とともに脱藩し、長州藩に身を寄せました。その後、坂本龍馬らと蝦夷地開拓を計画するも、実現には至りませんでした。

戊辰戦争での活躍

1867年（慶応3年）、王政復古の大号令が出され、長州藩が赦免されると、河田は鳥取藩に帰藩します。翌年、戊辰戦争が勃発すると、河田は東山道先鋒軍に加わり、鳥取藩兵参謀および志願農兵山国隊隊長を兼任。宇都宮城の戦いなどで活躍し、政府軍下参謀に就任、会津戦争にも従軍しました。その功績により、鳥取藩士として最高の賞典禄450石を与えられます。

明治政府での活躍と晩年

明治維新後、河田は甲斐府判事を皮切りに、軍務官判事、兵部大丞、京都府大参事兼留守判官、弾正大忠、民部大丞兼福岡藩大参事などを歴任。1871年（明治4年）の廃藩置県では初代鳥取県権令に就任しました。1878年（明治11年）には元老院議官、1883年（明治16年）には宮内省の道場済寧館の御用掛に就任。1887年（明治20年）には子爵を授爵され華族に列しました。さらに、貴族院議員も務め、1897年（明治30年）に70歳で亡くなりました。

河田景与は、尊王攘夷運動から戊辰戦争、そして明治政府での活躍まで、激動の時代を生き抜き、数々の功績を残した人物でした。その生涯は、日本の近代化を担った多くの志士たちの生き様を象徴するものです。彼の功績は、現代においても高く評価されています。

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