当縁郡

当縁郡：北海道十勝地方の消えた郡の歴史

当縁郡は、北海道十勝地方に存在した郡です。現在の広尾郡大樹町、中川郡幕別町、豊頃町の一部にその区域は広がっていました。その歴史は古く、江戸時代まで遡ります。

江戸時代から明治時代初期

江戸時代、当縁郡の地域は松前藩の支配下にありました。「トカチ場所」と呼ばれる地域の一部を形成し、東蝦夷地に属していました。交通は沿岸部を通り、渡島国の箱館から千島方面へと続く道（現在の国道336号の前身）が主要なルートでした。国防の観点から、寛政11年には天領となり、その後松前藩領に復したのち、安政2年には再び天領となりました。仙台藩が警固にあたるなど、複雑な領主交代を経て、戊辰戦争後の1869年、大宝律令の国郡里制に基づき、当縁郡が正式に設置されました。

明治時代：郡の変遷と消滅

明治2年（1869年）、北海道における国郡里制施行に伴い、十勝国とともに当縁郡が設置されました。当初は開拓使の管轄下にありましたが、その後、鹿児島藩、徳川慶頼（田安徳川家）の領地となり、廃藩置県を経て再び開拓使の管轄に戻りました。明治5年には戸長・副戸長が設置され、大区小区制が敷かれました。

明治9年には、開拓使による区画整理が行われ、全道30の大区と166の小区に再編されました。明治12年（1879年）の郡区町村編制法施行により、行政区画としての当縁郡が発足しました。その後、浦河郡外十郡役所、釧路郡外十一郡役所、釧路郡外十郡役所、釧路郡外十二郡役所、河西郡外五郡役所の管轄下に入り、明治30年（1897年）11月5日には郡役所が廃止され、河西支庁の管轄となりました。

そして、明治39年（1906年）4月1日、北海道二級町村制の施行により、当縁郡に属していた村々は隣接郡に編入され、当縁郡は消滅しました。これは、北海道庁発足後、初めての郡の消滅となりました。具体的には、広尾郡茂寄村（現・広尾郡大樹町、中川郡幕別町）、十勝郡大津村（現・広尾郡大樹町、中川郡豊頃町）などに編入されました。

当縁郡の行政と周辺

当縁郡の行政については、郡長が浦河郡外十郡長、釧路郡外十一郡長、釧路郡外十郡長、釧路郡外十二郡長、河西郡外五郡長といった役職名で示されるように、複数の郡をまとめて管轄する体制がとられていました。このことは、当縁郡が周辺地域との密接な関係の中で存在していたことを示しています。

まとめ

当縁郡は、江戸時代からの歴史を持ち、明治時代に消滅した北海道十勝地方の郡です。松前藩、天領、仙台藩など、複雑な歴史的背景と、周辺地域との関係、そして行政機構の変遷を通じて、北海道の歴史を理解する上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。その存在は、北海道の地方行政制度や地域社会の変容を映す鏡となっています。当縁郡の歴史を紐解くことは、北海道の歴史を深く理解することに繋がります。

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