徳川慶頼

徳川慶頼（とくがわ よしより）

徳川慶頼は、江戸時代後期から幕末にかけての武士であり、田安徳川家の第5代および第8代当主です。徳川宗家第16代当主である徳川家達の実父としても知られています。

生涯

文政11年（1828年）10月13日、田安家第3代当主・徳川斉匡の九男として生まれました。異母兄には福井藩主の松平慶永（春嶽）がおり、彼とはわずか1ヶ月ほどの年齢差でした。父・斉匡は、文化10年（1813年）に第11代将軍・徳川家斉の十一男・斉荘を養子に迎えており、天保7年（1836年）に隠居して家督を斉荘に譲りました。しかし、その3年後の天保10年（1839年）3月、斉荘が幕命により尾張徳川家の家督を相続することになったため、同年4月、慶頼が田安家を相続しました。同年5月には、従三位左近衛権中将兼右衛門督に叙任され、その後も参議、権中納言、従二位権大納言へと昇進しました。

第13代将軍・徳川家定の将軍継嗣問題では、南紀派として井伊直弼と連携し、安政5年（1858年）には家定の遺命を理由に新将軍・徳川家茂を擁立、将軍後見職に就任しました。しかし、実権はほとんどなく、実兄である春嶽は「慶頼は井伊直弼の奴隷と見なして差し支えない」と回顧しています。

文久2年（1862年）5月、将軍後見職を解任されました。これは、薩摩藩主・島津茂久の実父である島津久光が、かつて一橋派の将軍継嗣候補であった徳川慶喜を将軍後見職に就けて幕政改革を推進しようとした動きに対抗するためのものでした。慶頼は、これまでの功績により正二位に昇進しますが、久光の圧力により慶喜が将軍後見職に就任し、春嶽は政事総裁職に任命されました。

慶頼は官位の返上を願い出ますが、文久3年（1863年）には従二位権中納言に降格され、同日隠居して長男の寿千代に家督を譲りました。しかし、2年後の元治2年（1865年）に寿千代が夭折したため、家督は三男の亀之助（後の徳川家達）が相続することになります。

慶応4年（1868年）、前将軍・慶喜が寛永寺に謹慎する中、徳川家をまとめ、静寛院宮と協力して朝廷との折衝にあたり、江戸城無血開城に尽力しました。その後、江戸鎮撫取締に任じられ、新政府に協力しました。

同年閏4月、明治新政府は亀之助に徳川宗家の家督相続を許可し、慶頼は再び田安家当主となります。5月には、一橋家当主の徳川茂栄らと共に立藩し、諸侯に列しました（田安藩）。戊辰戦争で没収されていた上方領地の返還を求め、認められましたが、期待していたまとまった領地とは異なっていたようです。

明治2年（1869年）3月に版籍奉還を願い出て、同年12月に認められ、田安藩は廃藩となりました。知藩事に就任できなかったことを不満に感じ、知藩事就任の嘆願書を提出しましたが、認められず、明治3年（1870年）6月、田安藩は完全に解体されました。その後、明治3年から明治4年にかけて、北海道十勝の開拓に携わりました。

明治9年（1876年）9月21日、東京で死去。享年49（満47歳没）。墓所は東叡山寛永寺です。

系譜

父：徳川斉匡
母：篠崎氏（唯心院）
婚約者：暉姫（徳川家慶娘）
正室：徳川光子（閑院宮孝仁親王三女）
側室：高井武子
側室：沢井八重子

長女：喜久姫
長男：徳川寿千代
次女：紫雲院
三男：徳川家達
四男：徳川達孝
五女：春姫
五男：興丸
次男：隆麿
三女：鎮姫
四女：鏡姫
六男：徳川頼倫

参考文献

維新史料編纂会 編『現代華族譜要』日本史籍協会、1929年1月15日。NDLJP:1879484。

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