後氷期

後氷期とは

後氷期（こうひょうき）とは、約1万年前から現代に至る時代区分であり、地質学的には完新世（かんしんせい）とほぼ同義です。ヴュルム氷期と呼ばれる最後の氷期の後、地球の気候が温暖化し、氷河が後退した時代を指します。

前史：氷期から後氷期へ

ヴュルム氷期は約11万年前から始まり、徐々に気温が低下しました。約2万年前から1万8000年前に寒さのピークを迎え、その後急速に温暖化。1万3000年前には一時的に寒冷化する新ドリアス期がありましたが、1万年前には現在の気温水準に達し、後氷期が始まりました。

氷期には、海水が氷床として陸地に固定されるため、海面が大幅に低下しました。海面は現在よりも約100メートルも下がり、東南アジアのスンダ列島周辺はスンダランドと呼ばれる陸地となり、ベーリング海峡も地峡として北アメリカとシベリアを結んでいました。

気温の変動

後氷期に入ってからも、気温は安定していたわけではありません。約6000年前には、ヒプシサーマル期と呼ばれる、後氷期の中で最も温暖な時期を迎えました。日本では「気候最適期」とも呼ばれますが、地域によっては高温が人類や動植物の生育に適さない場合もありました。その後も気温は2000年周期で上下し、13世紀から19世紀前半にかけては小氷期と呼ばれる寒冷な時期が続きました。19世紀後半以降は、再び温暖化傾向にあります。

このような気候変動の原因としては、太陽活動、地球の火山活動、大気中の二酸化炭素濃度などが考えられていますが、まだ決定的な説はありません。現在問題となっている地球温暖化についても、人間の活動による二酸化炭素排出が主な原因とされていますが、否定的な意見もあり、議論が続いています。

海陸の変化

後氷期には、氷期に海面下に没していた大陸棚が再び海面下に沈みました。北大西洋では、高緯度まで暖かい海水が流れ込むようになり、ヨーロッパの気候は温暖化しました。また、河川によって運ばれた土砂が海岸近くの浅海に堆積し、各地に広大な沖積平野が形成されました。完新世の旧称である「沖積世」は、この様子を表しています。沖積平野は平坦で肥沃なため、人類の居住や農業に適しており、日本では人口が集中し、経済・文化の中心となりました。

生物相の変化

後氷期には、多くの生物が絶滅しました。特に、ヴュルム氷期の終わりから後氷期の初めにかけて、アメリカ大陸を中心に大型動物の絶滅が目立ちました。マンモスやメガテリウムなどがその例です。原因としては、氷期の急激な終焉による気候変動説と、人類による狩猟説がありますが、定説は確立されていません。

後氷期を通じて、人類の活動は動植物相に大きな影響を与えました。農耕の開始や文明の発展に伴い、森林が伐採され、土地が荒廃しました。地中海沿岸や西アジアでは、森林伐採や不適切な灌漑によって土地が荒れ、多くの動植物が絶滅しました。また、狩猟や家畜の導入によって生態系が破壊された例も数多くあります。

関連事項

地質時代
顕生代
新生代
第四紀
* 完新世

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