後藤隆之助

後藤隆之助：近衛文麿を支えた政治活動家の生涯

後藤隆之助（ごとう りゅうのすけ、1888年12月20日 - 1984年8月21日）は、日本の政治活動家として、昭和史にその名を刻みました。特に、近衛文麿のブレーンとして、彼の政治活動を支え、大政翼賛会の組織局長を務めたことで知られています。彼の生涯は、激動の時代を背景に、多岐にわたる活動と、その思想的な変遷を辿ることができます。

生い立ちと青年時代

茨城県（または千葉県佐原）に生まれた後藤は、第一高等学校に進学しました。一高在学中には、野球害毒論をめぐる騒動で、校長の新渡戸稲造を批判した押川春浪に謝罪文を書かせたという逸話が残っています。また、6年間一高に在籍し、新渡戸校長の計らいで卒業したというエピソードも、彼の個性的な人となりを伝えています。

豪傑肌で求道的な一面も持ち合わせていた後藤は、徳富蘆花に人生の意味を問い詰めたり、その答えを求めて関東一円を彷徨ったりするなど、型破りな行動をとることもありました。近衛文麿とは一高時代は疎遠でしたが、京都帝国大学に進学してから親交を深めることになります。

青年運動と右翼との関わり

京大卒業後、後藤は日本青年館に入り、青年団運動に従事しました。その後、大日本連合青年団主事として、昭和初期には農村問題や教育問題に関する研究会を組織しました。また、右翼の実力者であった玄洋社の杉山茂丸に師事し、志賀直方を兄のように慕うなど、右翼思想との関わりも深めていきました。

欧米視察と昭和研究会の設立

1932年、後藤は欧米視察に出かけ、ベルリンでヒトラーの演説を聞き、モスクワではスターリンに接近する機会を得ました。また、アメリカではルーズベルト大統領のブレーン・トラストとニューディール政策に感銘を受けました。

帰国後、後藤は親友である近衛文麿をサポートするために、国策研究組織を立ち上げることを決意します。志賀直方の支持を得て、1933年、後藤隆之助事務所を設立し、年末には昭和研究会と改称しました。この研究会では、「現行憲法の範囲内での国内改革」、「既成政党の排撃」、「ファシズムへの反対」を基本方針とし、蠟山政道、高橋亀吉、笠信太郎、尾崎秀実、三木清ら、官界、学界、言論界から幅広い人材が集まりました。研究会では、政治、経済、外交、文化など、多岐にわたる分野で国策研究が進められました。

近衛内閣と大政翼賛会

後藤は、近衛文麿のブレーンとして、第一次近衛内閣の発足時には組閣参謀を務めました。1938年には、研究会の後継者養成機関として昭和塾を設立し、永末英一、滝井義高、小川平二、大来佐武郎、武田豊など、後に政財界で活躍する人材を輩出しました。

日中戦争が長期化する中、昭和研究会は軍部の影響力を抑制するために、国民的政治力の結集を提唱し、これが近衛の新党・新体制運動の源流となりました。しかし、新体制運動をめぐり、研究会内部では慎重論も出ましたが、後藤は「天下の信用」を重んじ、新体制準備委員会の常任委員に就任しました。その後、大政翼賛会設立とともに組織局長に就任しますが、観念右翼からの攻撃を受け、1941年に辞任しました。

戦後と晩年

戦後、後藤は公職追放を受けましたが、追放解除後は、昭和研究会の関係者を集めて昭和同人会を主宰し、近衛の伝記編纂・刊行などを行いました。また、晩年には徳川埋蔵金の発掘に熱中するなど、その生涯は多岐にわたる活動に彩られました。

後藤隆之助は、激動の昭和史において、常に時代の中心に身を置き、その才能と情熱を政治活動に注ぎ込んだ人物でした。彼の生涯は、日本の近代史を理解する上で、重要な手がかりとなるでしょう。

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