徐夫人

徐夫人（じょふじん、生没年不詳）は、中国後漢末期から三国時代の呉に生きた女性です。孫権の2番目の正室として知られ、通称は徐妃（じょひ）と呼ばれました。揚州呉郡富春県（現在の江蘇省南部）の出身です。

一族の背景

徐夫人の家系は、孫権の一族と深い繋がりがありました。祖父の徐真（じょしん）は、孫権の父である孫堅（そんけん）と親交があり、彼の妹を妻に迎えていました。つまり、徐夫人は孫権にとって親戚にあたる人物でした。父は徐琨（じょこん）、兄は徐矯（じょきょう）、弟は徐祚（じょそ）といいます。

父の徐琨は、孫堅の時代から将校として活躍し、孫家臣の中でも最高の官位を得ていました。しかし、その兵力の大きさから孫策（孫権の兄）に警戒され、197年以降は参戦の記録がありません。孫権が家督を継いだ直後に将軍として復帰しましたが、黄祖（こうそ）との戦いで亡くなりました。その後、徐夫人の2人の兄弟も戦功により将軍に昇進しています。

生涯

徐夫人は、初め陸尚（りくしょう）という人物に嫁ぎましたが、死別しました。その後、孫権が討虜将軍（とうろしょうぐん）として呉にいた時代に、再婚しました。父の徐琨の生前に嫁いだのか、没後に嫁いだのかは定かではありません。

建安14年（209年）、孫権の長男である孫登（そんとう）が誕生しました。孫登の母親の身分が低かったため、徐夫人が母親代わりとして養育に当たりました。

建安16年（211年）頃、孫権が拠点を秣陵（まつりょう、現在の南京）に移す際、徐夫人は嫉妬深い性格であるという理由で廃され、呉に残されました。

しかし、孫登はその後も徐夫人を実の母のように慕い続けました。徐夫人から衣服の贈り物が届いた際には、必ず沐浴して身を清めてから身に着けたといいます。それは、孫権から寵愛を受けていた歩夫人（ほふじん）からの贈り物よりも丁重に扱われました。

黄初2年（221年）、孫権が魏から呉王に封じられると、孫登は太子に立てられました。これに先立ち、孫登は自身の母親代わりである徐夫人を后に立てるよう訴えていました。さらに黄龍元年（229年）、孫権が皇帝に即位すると、臣下たちも徐夫人を皇后に立てるよう進言しましたが、歩夫人の立后を望んでいた孫権はこれを受け入れませんでした。

その後、徐夫人は病気で亡くなりました。

出典

* 陳寿『三国志』巻50 呉書 孫権徐夫人伝

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