得能良介

得能良介の生涯と業績

得能良介（とくのう りょうすけ）、文政8年（1825年12月18日）に薩摩藩士・得能直助のもと、鹿児島の城下新屋敷で生まれました。父が急死したため、母と祖母に育てられました。17歳の時に藩の御記録所に書役助として出仕し、安政2年から江戸藩邸での勤務を開始しました。ある時、島津斉彬や久光の側近として活躍し、文久2年には久光の上洛に随行しています。彼は小松清廉や大久保利通、西郷隆盛といった有力な人々と親しい関係を築き、慶応3年には長崎に駐在しました。

明治3年（1870年）4月8日、大久保利通の推挙により大蔵大丞兼民部大丞に任命されました。当時の大蔵省は急進的な中央集権論者が多く、管理職の中で大久保と対立することもありました。そのため、大久保は薩摩出身者の要職を確保するため、得能を推挙したのです。この戦略には意図がありましたが、得能が実際に大蔵省の要職に昇進したのは長領によって多くの候補者が推挙されたにもかかわらず、得能と松方正義のみとなり、大久保の思惑は必ずしも成功したとは言えません。

同年中に人事異動があり、得能は出納頭（現在の主計局長）に任命されますが、明治5年5月に渋沢栄一との口論が原因で免官となりました。そして間もなく、司法省に招かれ、司法大丞などの役職を歴任しました。

再び大蔵省に戻ったのは明治7年（1874年）で、芳川顕正の後を受けて第3代の紙幣頭に就任しました。明治10年には官制改革に伴い、紙幣局長、同年12月には初代印刷局長に就任します。この頃、彼はかつての対立者である渋沢栄一とも和解し、第一国立銀行の運営に関与しました。また、銀行学局を設立して、銀行経営に必要な人材の育成にも努めました。

彼の業績は印刷技術の確立にも大きく寄与しており、イタリア人版画家のエドアルド・キヨッソーネを招聘して、近代的な印刷・抄紙工場の設立に尽力しました。これによって、国産第1号紙幣である国立銀行券1円紙幣の印刷第一号が実現しました。得能は、官僚としてだけでなく技術者としても、印刷の技術を高めることに貢献しました。

得能はさらに1879年に印刷局長として、古社寺や宝物の調査を行っており、その功績は評価されています。

1883年、得能は印刷局長兼務のまま初代大蔵技監に就任しましたが、同年12月に職務中に倒れて亡くなりました。享年78歳。彼の墓は青山霊園にあり、墓石は親交のあったキヨッソーネがデザインしました。

得能の研究は、彼の長男である得能通昌が印刷局長を1921年まで19年間務めるなど、家族にも続いていきました。また、長女は西郷清子であり、西郷従道の妻でもあります。得能良介は日本の近代官僚としての地位を確立し、印刷技術の発展に貢献した偉大な人物でした。

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