御用牙

『御用牙』

概要

『御用牙』は、原作を小池一夫、作画を神田たけ志が担当した日本の時代劇漫画です。少年画報社の『ヤングコミック』で連載されました。この作品は、単なる時代劇の枠を超え、ダークヒーローの要素を取り入れた異色の捕り物劇として知られています。

主人公の板見半蔵は、北町奉行所の隠密廻り同心でありながら、一匹狼として行動します。彼は、剣術の達人であると同時に、知略にも長けており、敵の弱みを握り、権力を利用して悪を討つという、従来の時代劇のヒーロー像とは一線を画す存在です。物語は、半蔵が江戸の町で悪党や権力者と戦う姿から始まり、その後、甲府勤番を経て、江戸に戻り、天保の改革を推進する老中・水野忠邦や、半蔵最大の敵となる南町奉行・鳥居耀蔵との対決が描かれます。

半蔵は、鳥居との戦いで全てを失いながらも、復讐のために鳥居の懐に入り、腹心として働きます。そして、密かに遠山景元と手を組み、水野と鳥居を失脚させることに成功します。その後、半蔵は大坂の町奉行所へ異動し、新たな仲間と出会いますが、またしても裏切りにあい、全てを失います。物語のラストでは、半蔵が刺され生死不明となり、物語は幕を閉じますが、後に描かれた続編では、一命を取り留めたことが明かされています。

また、本作では老中水野が急死するパラレルワールドも存在し、複数の世界線が描かれています。さらに、史実とは異なり、天保の改革が11代将軍・徳川家斉の時代に行われたことになっているなど、歴史的な設定にも独自の解釈が加えられています。

登場人物

板見 半蔵（いたみ はんぞう）
北町奉行所の隠密廻り同心。「かみそり半蔵」の異名を持ち、強面で恐れられる反面、弱者の味方として慕われています。体捨流剣術に加え、竹内流小具足術の達人であり、鎖分銅を仕込んだ「南蛮一品流鼻捻十手」や、「あられ鉄拳」と呼ばれるメリケンサックなど、多様な武器を使いこなします。

おゆら
御典医玄竹の義娘。大奥に出入りできる身分を利用して、中臈たちの逢瀬を仲介し、莫大な謝礼を受け取っていました。半蔵に手口を暴かれ、情婦となります。

地六（ちろく）
半蔵の配下の岡っ引。おしゃべりな性格で、半蔵によく叱られます。

大西 孫兵衛（おおにし まごべえ）
北町奉行所の筆頭与力。小心者で、半蔵の行動を苦々しく思っています。

大野 木玄蕃（おおのぎ げんば）
徒目付。曲がったことが嫌いで、「石垣直角」の異名を持ちます。半蔵の無二の親友となりますが、鳥居の謀略により殺害されます。

さくら
道中師の娘で、大西と津山の命で半蔵を襲いますが、返り討ちに遭い、情婦となります。

津山 頼母（つやま たのも）
甲府勤番支配頭。小心者で、半蔵に嫌がらせをしますが、仕返しを受けます。

鳥居 耀蔵（とりい ようぞう）
南町奉行。冷酷で手練手管から「妖怪」と呼ばれています。拳法の達人で、少林寺卍組を従えています。

新子（しんこ）
江戸の悪童を統べる少女。「河童の新子」と呼ばれています。半蔵に捕らえられ、情婦となります。

愚美（ぐみ）
鳥居配下の間諜で、半蔵の妻となります。

遠山 景元（とおやま かげもと）
元北町奉行。腕っ節が強く頭も切れ、半蔵の仲間となります。

徳川 家斉（とくがわ いえなり）
11代将軍。物語の初めは好人物でしたが、後に遊興に耽る暗君となります。

女籐 於兎（めとう おと）
半蔵を入婿に迎えた女藤家の娘。卑劣な計略により自害に追い込まれます。

千々岩 砕八郎（ちぢいわ さいはちろう）
大目付。剣豪で、半蔵を遥かに上回る実力を持っています。

佐々木 信濃（ささき しなの）
大坂西町奉行。「白房の狼」と呼ばれ、犬と毒を使った戦術を好みます。

加藤 忠介（かとう ちゅうすけ）
大坂西町奉行所の同心。「鳥もち加藤」と呼ばれ、卑劣な手段で於兎を篭絡しますが、粛清されます。

あおい
将軍家の姫君で、盗賊に攫われて以来、怪盗「葵小僧」として市中を騒がせていました。半蔵の情婦となります。

雲隅 一角（くもずみ いっかく）
御庭番支配。半蔵と意気投合し、悪友となります。

今村 清兵衛（いまむら せいべえ）
盗賊で、半蔵に説得され、半蔵のために働く手先となります。

真説 御用牙

『真説 御用牙』は、半蔵が重傷を負ったところを異人の女性に手当てを受けるところから始まる物語です。ここでは、半蔵は江戸の北町奉行所勤めとなっており、同田貫上野介正国という刀を使用します。

峰六（ほうろく）
日本の闇の世界を仕切る五大力の江戸差配。重傷を負った半蔵を助けます。

おぎん
峰六の配下の女。包丁を武器とし、“出刃打ち”の異名を持ちます。

五蕾（ごらい）
峰六の配下の女で、蘭法医術の心得があります。

木村正吾（きむら しょうご）
南町奉行所の同心。

左木田甚介の娘（さきだ じんすけのむすめ）
竹内判官流の小具足術の遣い手。半蔵の相方として登場します。

レイザー

『レイザー』は、20世紀初頭のアメリカ・ニューヨークを舞台にした作品で、“かみそり半蔵”の異名を持つ同心マーカスが活躍します。時代、人種、常識を超えた、型破りなバイオレンスアクション作品です。

映画

『御用牙』は、3度に渡って映画化されています。

第1作『御用牙』
三隅研次監督作品。板見半蔵が、流刑人・三途の竿兵衛を巡る事件に挑む姿を描きます。

第2作『御用牙 かみそり半蔵地獄責め』
増村保造監督作品。半蔵が、寺や神社で行われている“子おろし”に関わる事件を解決する姿を描きます。

* 第3作『御用牙 鬼の半蔵やわ肌小判』
井上芳夫監督作品。半蔵が、御金蔵から盗まれた小判を巡る事件を追う姿を描きます。

舞台版

2009年には、紀伊國屋サザンシアターにて舞台版が上演されました。

テレビドラマ版

1994年には、渡辺謙主演でテレビドラマが制作されましたが、お蔵入りとなり、2004年にCSで初放送されました。

サウンドトラック

2022年には、映画3部作の音源を収録したサウンドトラックが発売されました。

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