御庭番

御庭番とは

御庭番（おにわばん）は、江戸時代に徳川幕府 восьмой代将軍・徳川吉宗によって設けられた役職です。一般的には将軍直属の隠密として知られていますが、その実態は諜報活動を行うだけでなく、幕府の監察官としての役割も担っていました。

御庭番の職務

御庭番は、大奥に属する広敷役人の一つとして位置づけられ、若年寄の支配下にありました。彼らは江戸城本丸の庭に設けられた御庭番所に詰め、表向きは奥向きの警備を担当していましたが、実際には将軍の側近である御側御用取次からの命令を受け、情報収集活動を行っていました。

御庭番の主な任務は以下の通りです。

江戸市中の情報収集
大名や幕臣の動向監視
地方の情勢視察
異常事態の報告

彼らは、将軍直属の情報源として、幕府の重要事項に関わる情報を収集し、将軍の意思決定を支えました。また、御庭番は、身分は低いながらも将軍に直接目通りする機会もあり、将軍の意思を直接受けて行動する特殊な立場にありました。

御庭番の起源

御庭番の前身は、吉宗が将軍に就任する前に藩主を務めていた紀州藩の薬込役（くすりごめやく）です。薬込役は、紀州藩でも奥向きの警備と藩主の命による情報収集を行っていました。吉宗が将軍に就任した際、薬込役の中から十数名が江戸に移り、幕臣として御庭番となりました。

吉宗が御庭番を新設した理由としては、以下の点が挙げられます。

伊賀者や甲賀者の間諜機能の低下
傍流の紀州家出身の吉宗が信頼できる側近を求めた
* 大目付の監察機能の形骸化

これらの理由から、吉宗は自らの権力を強化するために、御庭番を創設したと考えられます。

御庭番の家筋

初代の御庭番は17名で、その子孫が世襲によって御庭番の職務を継承しました。その後、分家も生まれ、幕末には22家が残りました。御庭番の家筋は、互いに協力し、団結を保ちながら職務を遂行しました。

当初、御庭番の家筋は下級の御家人でしたが、幕末までに大半が下級の旗本にまで昇進しました。御庭番出身者が出世した場合、その子は旗本格の御庭番になるのが慣例でした。

御庭番は、隠密でありながらも、武鑑に氏名や住居、収入などが公開されていました。

遠国御用

御庭番が遠国に出張して実情を調査することを「遠国御用」といいます。御庭番は、将軍の命令を受けると、変装して秘密裏に出立するといったイメージがありますが、実際には事前に綿密な準備を行い、先輩御庭番に相談するなど、慎重に任務を遂行していました。

遠国御用では、京都や大坂の御用達町人が、御庭番の調査を支援する役割を担っていました。

御庭番は、遠国御用中には病欠扱いとされ、報告書上は即日出立・帰着とされていましたが、実際には準備や報告書作成のために数日間の在宅期間がありました。これは、職務に邁進しているという建前と、出張手当の支給のためでした。

御庭番の創作作品

一般的には、御庭番は間者や忍者のように描かれることが多いですが、史実に基づくと、御庭番は情報収集や監察を主な任務とする役人でした。時代劇や小説、漫画などでは、御庭番が活躍する姿が描かれていますが、これらは創作であり、史実とは異なる点に注意が必要です。

まとめ

御庭番は、江戸幕府の将軍直属の役人であり、情報収集や監察を主な任務としていました。彼らは、幕府の重要事項に関わる情報を収集し、将軍の意思決定を支える重要な役割を担っていました。御庭番は、一般的に知られているような間者や忍者とは異なり、実際には慎重かつ計画的に任務を遂行する役人でした。この史実を理解することで、御庭番に対する新たな認識を持つことができるでしょう。

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