徳川御三家

徳川御三家とは

徳川御三家は、江戸時代において徳川氏の宗家である将軍家に次ぐ家格を持ち、徳川の名字を名乗ることを許された3つの分家を指します。一般的には、初代将軍徳川家康の息子をそれぞれ始祖とする尾張徳川家（尾張家）、紀伊徳川家（紀伊家）、水戸徳川家（水戸家）を指します。

御三家の成立

御三家は、いずれも家康の血を引く親藩の最高位として、将軍家や御三卿とともに徳川姓の使用や三つ葉葵の家紋の使用が許された特別な大名家でした。将軍家を補佐する役割も期待されましたが、制度として明確に定められたものではありません。

室町幕府の「御一家」を参考に、将軍家の後継者が絶えた際に備え、尾張家と紀伊家から養子を出すことが定められていました。実際に、7代将軍家継が幼くして亡くなった際には、紀伊家から吉宗が8代将軍として迎え入れられました。その後、14代将軍家茂まで紀伊家の血筋が続きました。

水戸家は、他の2家と比べて家格が低く見られていましたが、朝廷への次期将軍の奏聞や江戸常住の義務などから、5代将軍綱吉の頃には他の2家と同等の「御三家」として扱われるようになりました。なお、最後の将軍慶喜は水戸家出身ですが、一橋家を継いだ後に将軍となったため、水戸家から将軍が出たとはみなされません。

幕末期には、御三家はそれぞれ異なる政治的立場を取りましたが、いずれも朝敵として扱われることはありませんでした。明治政府では、旧御三家は特に侯爵相当とされ、華族の中でも別格の扱いを受けました。

「御三家」概念の変遷

江戸時代初期には、将軍家、尾張家、紀伊家の総称として「御三家」が用いられることもありました。家康は、生前から尾張家と紀伊家を特別に引き立てることを求めていたと言われています。また、一時期は、駿河家を含めた3つの大納言家を「御三家」と呼ぶこともありました。当時、水戸家は中納言家であり、他の2家よりも家格が劣ると見られていました。

しかし、駿河家が断絶し、館林家や甲府家が将軍家を継いだことで消滅したため、結果的に水戸家が格上げされ、尾張・紀伊・水戸の3家を「御三家」と呼ぶことが定着しました。なお、将軍家から分かれた他の大名家には、徳川姓の使用が許されなかった家もありました。

御三家の領地

御三家は、それぞれ重要な場所に領地を持っていました。

尾張藩（名古屋藩）： 東海道と東山道が通る交通の要衝
紀伊藩（和歌山藩）： 太平洋航路の要となる紀淡海峡に面した地
水戸藩： 江戸から陸奥方面へ向かう街道の途上

御三家の系譜

（系図については省略。各家の初代藩主は本文に記載）

御三家の待遇

御三家の当主は、それぞれ以下の官位を極官としました。

尾張家・紀伊家： 従二位権大納言
* 水戸家： 正三位権中納言

御三家の当主は、江戸城内では最上級の大廊下に伺候し、正室は「御簾中」と呼ばれていました。

御三家の家臣と一族

御三家の家臣は、将軍家と同様に譜代の家臣を祖とする者が多く、御附家老は幕府から派遣された重臣で、大名と同格の扱いを受けました。御三家は、無嗣断絶を避けるため、御連枝と呼ばれる分家を持っており、そこから当主を輩出することもありました。しかし、時代が下ると、御連枝による当主継承は断絶し、将軍家からの養子が迎えられるようになり、幕府への依存度が高まりました。


御三家は、江戸幕府において特別な地位を占め、将軍家を支える重要な役割を担いました。その存在は、江戸時代の政治や社会に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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