徳光寿雄

徳光寿雄：映画からテレビへ、そして103年の生涯

徳光寿雄（1910-2014）は、日本の映画界とテレビ界に多大な貢献を果たした監督であり、実業家でした。103歳という長寿を全うし、その生涯は激動の時代を反映する興味深いものでした。

揺籃期と創作への目覚め

1910年、北海道出身の父・賢五郎と神戸の商人の娘である母・つねの間に、神戸で誕生しました。幼少期は両親の離婚により父に引き取られ、転居を繰り返す中で孤独な時間を過ごしました。しかし、この経験が詩や小説創作への情熱を育むこととなります。彼は創作活動に没頭し、詩人の同人会にも参加していたそうです。大倉高等商業学校（現・東京経済大学）卒業後、映画界へと足を踏み入れます。

映画界でのキャリア

1932年、河合映画製作社（後の大都映画）に入社。宣伝部、助監督、そして監督として活躍しました。その後、新興キネマを経て、毎日新聞社の映画部へ移籍し、ニュース映画制作に携わります。太平洋戦争開戦前には、日本映画社のニュース映画部で重要な役割を担い、戦後は同社の渉外課長、取締役営業部長、総務部長を兼務するなど、経営面にも貢献しました。現存する監督作品として、1939年製作の短編映画『五作ぢいさん』が知られています。

テレビ界への転身と革新

1953年、日本テレビ放送網の開局社員として入社。初代映画部長として、日本映画のテレビ放送を提案するも、当時の五社協定により実現には至りませんでした。しかし、彼は諦めずに、外国映画の日本語吹替放送という画期的なアイデアを提案し、1956年には『ロビンフッドの冒険』を放送。これは映画関係者からは批判を受けましたが、視聴者からは好評を得ました。その後も『名犬リンチンチン』『パパは何でも知っている』など、数々の外国映画や海外ドラマの日本語吹替版の制作・放送に携わり、日本のテレビ文化に大きな影響を与えました。

日本テレビでは編成局次長、報道局次長、芸能局次長などを歴任。1967年には東京12チャンネル（現・テレビ東京）に出向し、経営再建にも貢献しています。60歳で日本テレビを退職した後も、東京テレビセンターでCMスタジオ室長を務め、精力的に活動を続けました。

多彩な家族

寿雄の家族もまた、各界で活躍する個性豊かなメンバーで構成されています。フリーアナウンサーとして著名な徳光和夫氏は長男、タレントの徳光正行氏は孫にあたります。さらに、女装家のミッツ・マングローブ氏も孫に当たるなど、その活躍は多岐に渡ります。次男の徳光次郎氏は、英国伊勢丹の初代社長を務めた実業家でした。

103年の生涯

2014年、老衰のため103歳でこの世を去りました。映画監督、実業家として、そして日本テレビ放送網の開局に携わった人物として、彼の功績は日本のメディア史に刻まれています。多様な才能と、時代を駆け抜けた人生は、後世に大きな影響を与え続けるでしょう。彼の波瀾万丈の人生は、まさに20世紀日本の歴史そのものを映し出していると言えるかもしれません。

系譜

彼の家系は、北海道でニシン漁師として生計を立てていた祖父・治兵衛に始まります。父・賢五郎は日露戦争にも従軍し、その後、様々な事業に携わった人物でした。母方の祖父は、文学者・ジャーナリストの服部誠一という、文化人としての側面も持ち合わせています。このような家系の背景も、寿雄の多様な才能と、変化に富んだ生涯に影響を与えたと言えるのではないでしょうか。

もう一度検索