徳川吉通

徳川吉通

徳川吉通（とくがわ よしみち）は、江戸時代前期の大名で、尾張藩の第4代藩主です。1689年に3代藩主・徳川綱誠の十男として生まれました。幼名は藪太郎、後に吉郎、五郎太と改め、字は子中と称しました。5代将軍徳川綱吉から一字を賜り、吉通と名乗るようになりました。母は、絶世の美女として知られたお福の方（本寿院）です。

生涯

1699年、父・綱誠が急死したため、11歳で藩主となりました。若年であったため、叔父である高須藩主・松平義行が藩政を補佐しました。吉通は、武術、儒学、国学、神道を修め、特に剣術では尾張柳生新陰流9世を継承するなど、文武両道に秀でた人物でした。内政面では、停止木制度を設けて木曽の林政改革にも取り組み、名君としての評価を高めました。

吉通は、異母弟である松平通春（後の7代藩主・徳川宗春）を非常に可愛がり、夕食を共にするほどでした。しかし、1713年に名古屋藩士2人が吐血頓死・自害する事件が起き、その月に名古屋藩の分家である梁川藩主・松平義昌が亡くなると、同月21日、蟄居謹慎させていた母・本寿院を饗応した直後に発病、26日に25歳（満23歳）という若さでこの世を去りました。

不審死

吉通の死は、その異常な状況から不審死として語られています。食後急に吐血して悶死したとされ、医師が近侍していたにもかかわらず看病しなかったという証言もあり、当時から死因を不審がる者がいました。名古屋藩士の日記には、和歌山藩の間者が名古屋藩邸をうかがっていたという風聞が記されています。さらに、吉通の嫡男・五郎太も同年の10月に死去し、尾張徳川家の正統は将軍家に先立って絶えることとなりました。

将軍継嗣問題

1712年、時の将軍・徳川家宣が病床で後継について相談した際、吉通が候補に挙がりました。家宣は、幼い徳川家継を立てるか、吉通に譲るか、または吉通を後見人とするかを側近の新井白石に相談しました。しかし、白石は家継を立てるべきと進言し、結果として家継が将軍を継ぐことになりました。もし家宣が吉通を後継者として選んでいたら、歴史は大きく変わっていたかもしれません。

官歴

1693年（元禄6年）4月 - 幼名を五郎太と改める
1695年（元禄8年）8月25日 - 苗字を徳川と称する
1695年（元禄8年）12月4日 - 将軍徳川綱吉の名を一字賜り、吉通と名乗り、従四位下に叙し、右兵衛督に任官
1699年（元禄12年）7月11日 - 尾張国名古屋藩主となる
1699年（元禄12年）8月13日 - 従三位に昇叙し、右近衛権中将に遷任
1701年（元禄14年）12月11日 - 参議に補任
1704年（宝永元年）11月28日 - 権中納言に転任
1713年（正徳3年）7月26日 - 薨去。享年25（満23歳没）。

家系

父：徳川綱誠
母：お福、下総の方、本寿院（坂崎氏女、綱誠側室）
正室：輔姫（瑞祥院、九条輔実女）
長男：徳川五郎太（名古屋藩5代）
側室：さん（随縁院）
長女：三千君（千姫、九条幸教室）
側室：尾上（清水院、守崎氏）
次女：三姫（名古屋藩8代徳川宗勝室）
兄弟姉妹
徳川継友（名古屋藩6代）
松平義孝（美濃高須藩2代）
徳川宗春（名古屋藩7代）
光現院（加賀6代藩主前田吉徳室）

偏諱を与えた人物

松平通幸（通顕）（実弟、のちの徳川継友）
松平通温（実弟）
松平通春（実弟、のちの徳川宗春）

登場作品

* 『大奥』 - よしながふみ

吉通は、その短い生涯の中で、藩政改革や将軍継嗣問題に関与し、歴史に名を残しました。その早すぎる死は多くの謎に包まれており、今もなお人々の関心を惹きつけています。

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