徳川宗勝

徳川宗勝：尾張藩を立て直した名君

徳川宗勝（とくがわ むねかつ）は、江戸時代中期に尾張藩の第8代藩主を務めた人物です。尾張徳川家の一門である川田窪松平家の出身であり、高須藩の藩主も兼任しました。先代藩主の宗春が退いた後、財政難にあえいでいた尾張藩を立て直すという難題に挑み、見事に藩政改革を成し遂げた名君として知られています。

生い立ちと藩主就任まで

宗勝は、尾張徳川家の一門である松平友著の長男として生まれました。幼少期は祖母の縁者を頼って養育され、その後も身分の低い役人の下で過ごしたといわれています。幼名は代五郎、後に友相、友淳と名を改めました。享保17年（1732年）には、尾張藩の支藩である高須藩の藩主・松平義孝の養子となり、高須藩主を継ぎました。この時、松平義淳と名乗ります。しかし、元文4年（1739年）に、尾張藩主であった従兄の宗春が、幕府によって強制的に隠居させられると、その後継として尾張藩主となります。この時、将軍・徳川吉宗から偏諱を授かり、宗勝と改名しました。

尾張藩主としての改革

尾張藩主となった宗勝は、先代の宗春の放漫財政によって深刻な財政難に陥っていた尾張藩の再建に尽力しました。自ら倹約に努め、増税を避ける緊縮財政政策を採用しました。その結果、藩財政は着実に回復しました。この改革が成功した背景には、先代の宗春が築いた基盤があったとの意見もありますが、宗勝が名君であったことは疑いありません。また、布施蟹養斎を登用して藩校・明倫堂の前身となる学問所を創設し、文化的な書物の編纂や刑法の整備にも力を入れました。刑法の整備においては、寛容な側面も見られましたが、盗賊取締りのために死刑制度を復活させるなど、厳しい一面も持ち合わせていました。

子宝と血筋

宗勝は、15男11女という多くの子宝に恵まれました。八男・竹腰勝起の血筋は、現在も藩祖・義直の男系子孫として続いています。また、五男・松平義当を通じて、現在の徳川宗家にも血脈が受け継がれています。

官職と位階

宗勝は、従五位下、但馬守から始まり、左近衛権少将、右近衛権中将、権中納言へと昇進しました。尾張藩主時代には、右兵衛督も兼任しています。

死去とその後

宝暦11年（1761年）、57歳で死去しました。法名は賢隆院殿恩譽慈性源戴大居士。跡は次男の徳川宗睦が継ぎました。宗勝の墓所は、名古屋市東区筒井にある徳興山建中寺にあります。

系譜

父：松平友著
母：湯本氏（繁、円珠院）
正室：三姫（宝蓮院、徳川吉通の娘）
長男：萬彌（夭折）
側室：お嘉代の方（英巌院）
長女：房姫（島津宗信婚約者）
次男：徳川宗睦（尾張藩主）
六男：松平勝長
側室：お登世の方（清光院）
三男：松平義敏（高須藩主）
三女：豊姫（上杉重定正室）
五男：松平勝当（高須藩主）
十一男：内藤頼多
側室：お津屋の方（妙観院）
七男：松平勝綱（夭折）
八男：竹腰勝起（今尾藩主）
五女：邦姫（島津宗信婚約者、浅野重晟正室）
側室：おすめの方（寿光院）
十男：井上正国
側室：お留屋の方（利光院）
七女：品姫（松平重昌婚約者、水戸支流松平頼前正室）
側室：得船院
八女：恭姫（九条道前室）
九女：陽姫（浅野重晟継室）
側室：寺島氏
十二男：松平勝鷹（夭折）
側室：寺嶋そよ（仙宥院）
十四男：内藤政脩


宗勝は、その優れた手腕で尾張藩を立て直し、藩政の基礎を築いた名君として、後世に語り継がれています。

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