徳川継友

徳川継友：波乱に満ちた生涯と藩政改革

徳川継友は、江戸時代中期の第6代名古屋藩主であり、その生涯は将軍後継候補としての期待と、藩主としての苦悩が入り混じったものでした。彼は、第3代藩主・徳川綱誠の十一男として生まれ、幼名は八三郎と名付けられました。元服後、兄である第4代藩主・徳川吉通から偏諱を受け、通幸、次いで通顕と改名。さらに、第7代将軍となる徳川家継から一字を賜り、継友と名乗るようになりました。

継友の人生は、兄・吉通と甥・五郎太の相次ぐ急死により、大きく転換しました。それまで「お控え」として過ごしていた彼は、一躍藩主の座に就くことになったのです。しかし、その喜びも束の間、五郎太の死の翌日に盛大な酒宴を開いたことが、附家老の竹腰正武から不謹慎であると諌められるという一件もありました。

継友の兄・吉通は、第7代将軍候補に挙がったこともありました。尾張徳川家は、将軍家と最も近い血筋であり、継友自身も将軍候補として有力視されることになります。関白太政大臣・近衛家熙の娘である安己姫と婚約していたことも、彼の立場を後押ししました。安己姫の叔母にあたる天英院は、大奥で大きな影響力を持っており、継友は幕府や朝廷からも期待されていたのです。しかし、最終的に第8代将軍の座は、紀伊藩主の徳川吉宗に渡り、継友の将軍就任は実現しませんでした。この背景には、尾張藩の「将軍位を争うべからず」という不文律や、天英院の意向があったとされています。

藩主としての継友は、財政再建に力を注ぎました。彼は、役職の整理や一族への給与削減を行い、藩財政の立て直しに貢献しました。その一方で、「性質短慮でけち」と領民からの評判は芳しくなかったようです。また、将軍位を逃したことから、「尾張大納言」と「尾張大根」をかけられ「切干大根」というあだ名で呼ばれることもありました。しかし、彼が推し進めた緊縮財政は、後の名古屋の発展に繋がったとも言われています。名古屋の城下町は7万人を超える人口を抱え、江戸の豪商三井家が再び出店するなど、街は活気に満ち溢れていました。

晩年、継友は麻疹により39歳という若さでこの世を去りました。後継者がいなかったため、異母弟の松平通春（後の徳川宗春）が跡を継ぐことになります。継友の死後、彼が推し進めた藩政改革の成果は、次代の宗春の時代に花開くことになります。

継友の人生は、将軍候補としての期待と、藩主としての責務、そして財政改革という、多岐にわたる側面を持っていました。その複雑な人物像は、後世の作家たちにも影響を与え、小説やドラマにも登場しています。彼は、一見すると短気でケチな人物として捉えられがちですが、その内面には、藩の財政を立て直し、名古屋を発展させようという強い意志があったと言えるでしょう。

官職および位階等の履歴

正徳2年12月15日（1713年1月11日）：従四位下に叙せられ、左近衛権少将に任官。大隅守を兼任。
正徳3年11月11日（1713年12月28日）：尾張国名古屋藩主となる。
正徳3年11月25日（1714年1月11日）：将軍徳川家継の一字を賜り、継友と改める。
正徳3年12月25日（2月9日）：従三位に昇叙し、左近衛権中将に転任し、右兵衛督を兼任。
正徳4年11月28日（1715年1月3日）：参議に補任。
正徳5年12月1日（1715年12月26日）：権中納言に転任。
享保15年11月27日（1731年1月5日）：薨去。

家系

父：徳川綱誠
母：和泉（泉光院　林氏）
正室：安己君（光雲院　近衛家熙女）
側室：右京（岡野　園野　善良院　秋山氏）
長男：八三郎（夭折）
養女：三千君（徳川吉通女、九条幸教室）

関連作品

『八代将軍吉宗』（演 ‐ 羽賀研二）
『大奥 最終章』（演 ‐ 山口翔悟）
「鬼舐役宗八」（神坂次郎『おかしな大名たち』収録、中公文庫）
紀州（落語） - 徳川家継の後継将軍争いを題材にした地噺

脚注

注釈
* 出典

もう一度検索