徳川治保

徳川治保：水戸藩中興の祖

徳川治保（とくがわ はるもり）は、常陸国水戸藩の第6代藩主であり、水戸藩中興の祖として知られています。40年にも及ぶ治世において、藩政改革、学問奨励に尽力し、水戸藩の発展に大きく貢献しました。

生涯

寛延4年（1751年）に徳川宗翰の長男として生まれた治保は、明和3年（1766年）に16歳で家督を継ぎました。しかし、3代続けての若年藩主就任に加え、前藩主の改革失敗による混乱から、藩の財政は悪化の一途を辿り、百姓一揆も頻発しました。安永7年（1778年）には幕府から財政立て直しの非常措置を命じられるなど、苦難の時代が続きました。

天明7年（1787年）には、他の御三家や御三卿と共に田沼意次一派の粛清を推進し、松平定信を老中に就任させるなど、幕政にも影響力を行使しました。寛政2年（1790年）には、藩政改革のため、就任後初めて水戸に入り、半年間滞在しました。この際、領内への御用金賦課によって帰国費用を調達するなど、財政難は深刻でした。

藩政改革

治保は、藩財政再建を主とする藩政改革を断行しました。寛政5年（1793年）には、藩士の禄の半知借上や献上金をした者を郷士に取り立てる制度を実施しました。また、人口減少で荒れた農村の復興策として、3人以上の子がいる農民への稗支給や、間引き防止のための妊婦改め・出産届の厳重化などを行いました。寛政11年（1799年）には郡奉行の増員など郡制改革も実施しました。

さらに、水戸城下の振興策として消費促進政策を打ち出しました。異母弟の中山信敬が実行したこの政策は「江戸仕掛け」と呼ばれ、馬市の開催や江戸芝居・相撲興行などを行い、消費を促しました。しかし、倹約を旨とする幕府の命により、1年足らずで中止されました。その他、鋳銭事業や製紙事業、タバコ、こんにゃくなどの殖産興業にも尽力しました。

学問奨励

2代藩主・徳川光圀に倣い、学問奨励にも力を注ぎました。停滞していた『大日本史』編纂事業を軌道に乗せ、自ら学者と共に校訂作業にあたりました。藩士には彰考館の学者による講義を始めたり、学力試験を行うなど、学問重視の姿勢を明確にしました。藤田幽谷や長久保赤水など、町人や農民からも有能な人材を藩士として取り立てました。また、立原翠軒ら彰考館の総裁を政治顧問とし、学者の意見を政治に反映させようとしました。

治保自身も優れた文人であり、『文公文集』や『尚古閣雑録』など多くの著書を残しました。

文化2年（1805年）に55歳で死去。跡を嫡男の治紀が継ぎました。その功績から、明治40年（1907年）には正二位を追贈されています。

人物

治保は、藩政改革、学問奨励に尽力し、水戸藩の発展に大きく貢献しました。その功績から、水戸藩中興の祖として、後世に語り継がれています。

また、徳川慶喜（15代将軍）と徳川宗家に最も近い男系共通祖先にあたり、幕末から明治維新期の尾張徳川家、幕末以降の一橋徳川家、清水徳川家の当主は治保の子孫が就いています。

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