心の傷を癒すということ (テレビドラマ)

『心の傷を癒すということ』は、2020年1月から2月にかけてNHK総合の土曜ドラマ枠で放送された全4話のテレビドラマです。阪神・淡路大震災から25年を機に、NHK大阪放送局が制作しました。このドラマは、震災で被災しながらも被災者の心のケアに尽力した精神科医・安克昌氏をモデルとし、彼の妻や被災者との心の繋がりを描いたヒューマンドラマです。原作は、桑原亮子氏によるオリジナルフィクションで、安氏の同名書籍とは内容が異なります。

主人公の安和隆は、ジャズを愛する内気な精神科医です。在日としての悩みを抱えながらも、明るい妻・終子と出会い、穏やかな日々を送っていました。しかし、第一子が誕生した直後に阪神・淡路大震災が発生し、和隆は精神科医として何ができるのかを模索します。被災者の話に耳を傾ける中で、治療よりも彼らの治癒力を回復させる手助けが重要だと気づきます。その後、被災地での経験を記した著書が評価され、順風満帆な人生を送るかに見えましたが、39歳で癌が発覚します。ドラマでは、和隆の人間としての成長と、彼を取り巻く人々の心の葛藤が丁寧に描かれています。

登場人物
安和隆（演：柄本佑）：主人公。精神科医で、神戸大学医学部附属病院に勤務。
安終子（演：尾野真千子）：和隆の妻。
安哲圭（演：石橋凌）：和隆の父。在日韓国人一世の事業家。
朴美里（演：キムラ緑子）：和隆の母。在日韓国人二世。
安智明（演：森山直太朗）：和隆の兄。原子力研究開発の第一人者。
安壮介（演：上川周作）：和隆の弟。父の事業を継ぐ。
湯浅浩二（演：濱田岳）：和隆の親友。精神科医で、ジャズバンド仲間。
谷村英人（演：趙珉和）：新聞記者。和隆に連載執筆を依頼。
ママ（演：濱田マリ）：ジャズ喫茶「スクルド」のママ。
結城理恵（演：谷村美月）：震災で精神的に不安定になった和隆の患者。
校長先生（演：内場勝則）：避難所となった小学校の校長。
梓（演：紺野まひる）：仮設住宅の入居者。
片岡心愛（演：清水くるみ）：和隆の患者。多重人格。
北林史也（演：浅香航大）：和隆の後輩医師。
新島聡子（演：平岩紙）：和隆の同僚看護師。
永野良夫（演：近藤正臣）：和隆の恩師。精神医学の権威。

制作スタッフ
原案：安克昌『心の傷を癒すということ 神戸…365日』
脚本：桑原亮子
音楽：世武裕子
制作統括：城谷厚司
プロデューサー：京田光広、堀之内礼二郎、橋本果奈、齋藤明日香
演出：安達もじり、松岡一史、中泉慧
制作・著作：NHK大阪放送局

プロデューサーの京田光広氏自身も阪神・淡路大震災で被災しており、取材活動を通して「取材は被災者の助けになるのか」という疑問を抱えていました。後に安氏の著書と出会い、自身の故郷と向き合う決意を固め、ドラマ制作に至りました。

脚本の桑原亮子氏も、中学生時代に西宮市で被災しており、自身の震災体験と安氏の遺族への取材を通して脚本を執筆しました。主演の柄本佑氏は、撮影前から遺族と対話し、ジャズピアノの練習を重ねて撮影に臨んだそうです。

放送・評価
ドラマはNHK総合で放送され、その後、関西地方で再編集されたスペシャル版も放送されました。ギャラクシー賞月間賞、放送文化基金賞最優秀賞など数々の賞を受賞しており、高い評価を受けています。特に、柄本佑の繊細な演技と、ドラマ全体に流れる優しく寄り添うような雰囲気が評価されています。「弱さを受け入れることの大切さ」や「他人の弱さを理解することの大切さ」といったテーマが、多くの視聴者の心に響きました。

映画化
2021年1月には、ドラマ全4話を再編集した劇場版『心の傷を癒すということ 劇場版』が公開されました。監督はドラマと同じく安達もじり氏が担当し、ドラマ版のキャストが再集結しました。

関連商品
DVDが発売されています。
サウンドトラックが配信されています。
シナリオが『月刊ドラマ』に収録されています。

『心の傷を癒すということ』は、震災という悲劇を通して、人間の心の強さや優しさを描いた感動的な作品です。多くの人々に寄り添い、現代社会を生きる人々を支えてくれる作品として、今後も語り継がれていくでしょう。

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