忉利天上寺

摩耶山天上寺：歴史と信仰の聖地

摩耶山天上寺の創建は、今からおよそ1400年前、大化2年（646年）に孝徳天皇の勅願により、インドの高僧・法道仙人によって行われたと伝えられています。その後、空海が中国から持ち帰ったとされる摩耶夫人尊像が安置されたことで、この山は「摩耶山」と呼ばれるようになりました。寺号の「忉利」は、摩耶夫人が転生したとされる天上に由来しています。

平安時代から鎌倉時代にかけては、多くの塔頭や僧坊を抱え、摂津地方屈指の大寺院として栄え、3000人を超える僧侶が修行生活を送っていたと伝えられています。皇族や武将からも篤い信仰を集め、花山天皇や正親町天皇も祈願所として利用しました。特に鎌倉時代末期の摩耶山合戦で知られる摩耶山城は、この寺と同一視される説もあります。

江戸時代には、徳川家光によって摂津国の鎮護寺（護国寺）に選定され、紀州徳川家が将軍家の代参を務めました。このことから、天上寺の紋章には、天皇家より賜った五七の桐紋と、徳川家より賜った三つ葉葵紋が組み合わされています。

しかし、1976年（昭和51年）1月30日未明、放火により仁王門や一部の建物などを除き、ほとんどの建物が焼失するという大きな被害を受けました。その後、現在の場所に移転再建されました。旧境内は摩耶山歴史公園として整備され、焼失を免れた仁王門や、当時の様子を偲ばせる石垣や石段などが残されています。

2020年（令和2年）4月3日には高野山真言宗から独立し、摩耶山真言宗を設立、その総本山となりました。

本尊と境内

天上寺の両本尊は、「十一面観音菩薩像」と「仏母摩耶夫人尊像」です。

「十一面観音菩薩像」は、高さ約6cmの黄金の秘仏であり、通常は公開されていません。33年に一度の開帳が行われると伝えられています。大阪湾と摩耶山周辺地域を守る仏として信仰を集めてきました。一方、「仏母摩耶夫人尊像」は、1976年の火災で焼失したため、その後新たに造られました。現在は、2002年（平成14年）に再建された摩耶夫人堂に安置されています。

境内には、金堂（本堂）のほか、伽藍神である釈帝権現を祀る権現社、全国唯一の摩耶夫人を祀る摩耶夫人堂、密教学講伝所、一願地蔵堂、法道仙人石像、天空の大舞台、鐘楼、書院、一字金輪を祀る金輪堂、本坊、天竺堂、西山門などがあります。また、旧境内は摩耶山歴史公園として整備されています。

文化財と周辺情報

天上寺には、兵庫県指定有形文化財の「紺紙金字妙法蓮華経」8巻や、神戸市指定有形文化財の「絹本著色弥勒曼荼羅」など、数多くの貴重な文化財が所蔵されています。

また、新西国三十三箇所、関西花の寺二十五霊場、西国愛染十七霊場、摂津国八十八箇所、摂津国三十三箇所、神戸十三仏霊場、神戸七福神布袋尊、福原西国三十三観音霊場、神仏霊場巡拝の道など、多くの霊場巡拝コースにも含まれています。

拝観は無料、開門時間は8時から17時です。アクセスは、三宮駅、JR新神戸駅、JR六甲道駅、阪急六甲駅から神戸市バスを利用し、「摩耶ケーブル下」で下車、摩耶ケーブルと摩耶ロープウェーを乗り継いで山上へ。山上駅から徒歩約10分です。ただし、バスやケーブルカーの運行状況は季節や曜日によって異なるため、事前に確認することをお勧めします。

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