志村敏夫

志村敏夫とは

志村敏夫（しむら としお）は、1914年（大正3年）10月13日に静岡県志太郡島田町（現在の島田市）に生まれた、日本の映画脚本家であり監督です。1980年（昭和55年）7月7日に満65歳でその生涯を閉じるまで、多岐にわたる映像作品に携わりました。

キャリアの始まり

彼のキャリアは、脚本家として始まりました。1936年（昭和11年）、22歳を迎える頃、高田稔が率いる高田プロダクションと新興キネマが共同で製作した牛原虚彦監督の作品『五々の春』に、脚本の一人として参加しました。その後、1940年（昭和15年）には東宝映画に籍を置き、斎藤寅次郎監督の手がける数々の作品で脚本を担当しました。例えば、『ロッパの駄々っ子父ちゃん』、『親子鯨』、『子宝夫婦』、『人生は六十一から』、『素晴らしき金鉱』、『突貫駅長』など、多くの作品で脚本家としての腕を磨きました。その他にも、岡田敬監督の『エノケンの爆弾児』、青柳信雄監督の『兵六夢物語』といった作品の脚本も手がけています。

戦後、監督の道へ

第二次世界大戦後、日本の映画界が新たな体制へと移行する中で、志村敏夫も重要な一歩を踏み出します。1947年（昭和22年）、新東宝の設立に参加し、萩原遼監督の『大江戸の鬼』ではチーフ助監督を務めるなど、製作現場で経験を積みました。そして1948年（昭和23年）、新東宝と竹井プロダクションが共同で製作した作品『群狼』で、ついに映画監督としてデビューを果たしました。

新東宝では、『海のGメン 玄海灘の狼』、『肉体の白書』、『黄金獣』、『黄金バット 摩天楼の怪人』、『月が出た出た』、『無宿猫』、『私はシベリヤの捕虜だった』、『貞操の街』など、様々なジャンルの作品を監督しました。また、新映画や東京映画配給といった外部プロダクションとの提携作品も手がけています。

映画会社間の移籍と多様な活動

1954年（昭和29年）、志村敏夫は活躍の場を宝塚映画に移し、ここでも『鞍馬天狗 疾風八百八町』、『照る日くもる日 前篇・後篇』、『右門捕物帖 献上博多人形』など、計6本の作品を監督しました。翌1955年には再び新東宝へ復帰し、『息子一人に嫁八人』、『君ひとすじに』シリーズ、『社長三等兵』、『女真珠王の復讐』、『軍神山本元帥と連合艦隊』、『海の三等兵』、『関八州大利根の対決』、『死刑囚の勝利』、『怒濤の兄弟』、『海女の戦慄』といった多数の作品を次々と発表しました。特に『社長三等兵』や『海の小扇太』などでは脚本も兼任しています。

1958年（昭和33年）、志村は当時新東宝の看板女優であった前田通子と共に同社を離れ、フリーランスとしての活動を開始します。

テレビ時代と海外での挑戦

1959年（昭和34年）にはテレビ映画の世界に進出し、日本テレビで放映された『狼が来たよ』を手がけました。さらに1960年（昭和35年）には、ニッサンプロダクションとフジテレビが製作した特撮作品『怪獣マリンコング』の監督を務め、新たな分野に挑戦しました。1963年（昭和38年）には、前田通子と共に台湾に招かれ、『秋風秋雨割心腸』といった台湾映画を監督するなど、国際的な活動も行っています。また、フジテレビの土曜ナイトショー枠で放映されたテレビ映画版『死刑囚の勝利』もこの時期の作品です。

50歳を迎えた1964年（昭和39年）には、国際放映と毎日放送が製作したテレビ映画『江戸忍法帖』を監督しました。しかし、この作品は出演者の不祥事が原因で、東京においては1967年（昭和42年）まで放映が延期されるという出来事がありました。

脚本家として出発し、映画監督として新東宝や宝塚映画で多くの作品を手がけ、さらにテレビや海外にまで活動の幅を広げた志村敏夫は、日本の戦後映像史において多様な足跡を残しました。

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