恋の綱わたり

恋の綱わたり：中村晃子を再びチャート上位へ導いたヒット曲

1980年6月5日、歌手・中村晃子によってリリースされたシングル曲「恋の綱わたり」は、彼女のキャリアにおいて重要な位置を占める楽曲です。テイチク・レコードから発売されたこの作品は、1967年の大ヒット曲「虹色の湖」と並び、現在でも中村晃子の代表曲として親しまれています。

楽曲の源流と制作背景

この楽曲のルーツは、中村晃子のシングル発売よりも遡ります。元々は1978年にPARCO西武劇場で上演された、女優・桃井かおりのワンマン・ステージのために書き下ろされたものでした。ミュージカル風のこの舞台では、脚本と劇中歌の作詞を福田陽一郎が、音楽を三木たかしが手掛けていました。後のシングル版と同じく、作詞・作曲は福田陽一郎と三木たかしが担当しています。

中村晃子によるカバーバージョンが誕生した背景には、テレビドラマとの密接な関係がありました。この楽曲は、1980年4月10日から7月3日にかけてTBSテレビ系列で放送された木曜連続ドラマ『離婚ともだち』の挿入歌として制作されたのです。偶然にも、このドラマの脚本を担当していたのが、オリジナル版の作詞も手掛けた福田陽一郎でした。さらに、中村晃子自身もこのドラマに出演しており、自らが出演する作品に自身の楽曲が使用されるという、特別な形で発表されました。

編曲は船山基紀が手掛け、ドラマの世界観に寄り添いつつも、中村晃子の歌唱が映えるアレンジが施されました。

久々のヒットとメディアでの露出

「恋の綱わたり」は、中村晃子にとって久々の大きな商業的成功をもたらしました。特に、1973年のヒット曲「あまい囁き」以来となる、オリコンヒットチャートでの上位進出を果たします。

発表後、チャートを駆け上がり、週間最高位では第4位を記録しました。これは、当時の活況を呈していた日本の音楽シーンにおいて、確かな存在感を示したと言えるでしょう。また、年間チャートでも1980年の第43位にランクインしており、単なる一過性のヒットに終わらず、年間を通して多くのリスナーに支持されたことが分かります。

テレビの歌番組でも注目を集めました。特にTBS系の人気音楽番組『ザ・ベストテン』には、1980年7月17日放送回に「今週のスポットライト」コーナーで初登場。その後の反響を受け、同年7月31日と8月7日の放送では、2週連続で週間ランキング第8位にランクインを果たしました。テレビを通じて多くの視聴者の耳に届き、そのヒットを後押しする形となりました。

楽曲とパフォーマンス

「恋の綱わたり」はその独特な詞世界とメロディーラインで、一度聴いたら忘れられない印象を与えます。中村晃子は、この楽曲を披露する際に、自身でピアノ伴奏をしながら歌唱するというスタイルを見せることもあり、その音楽家としての才能と表現力を際立たせました。

カップリング曲「夜ふかし気分」

シングルのB面には「夜ふかし気分」が収録されています。この楽曲は、作詞を阿久悠、作曲を川口真、編曲を高田弘が手掛けました。実はこの曲、1978年に江利チエミが発表したシングルのカバーバージョンであり、中村晃子なりの解釈で歌い上げられています。

「恋の綱わたり」は、ドラマとのタイアップ、優れた制作陣、そして中村晃子自身の魅力的な歌唱とパフォーマンスが相まって生まれたヒットであり、今もなお多くの人々に記憶されている一曲です。

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