恐竜と赤ん坊

『恐竜と赤ん坊』（原題：Le dinosaure et le bébé）は、1967年にアンドレ・S・ラバルト監督によって制作されたドキュメンタリー映画です。フランスの公共放送ORTFが制作したドキュメンタリーシリーズ『われらの時代のシネアストたち』の一環として制作され、シリーズ27作目にあたります。

この作品は、映画史に名を刻む二人の巨匠、フリッツ・ラングとジャン＝リュック・ゴダールへのインタビューを中心に構成されています。ラングはドイツ出身のアメリカ人映画監督で、ゴダールはフランスのヌーヴェルヴァーグを代表する監督です。二人の対談は、映画制作に対する考え方の違いや、それぞれのキャリアにおける経験、そして映画芸術全般にまで及ぶ深い内容となっています。

『われらの時代のシネアストたち』シリーズは、映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』の初代編集長アンドレ・バザンの妻、ジャニーヌ・バザンと、同誌で映画批評家としてキャリアをスタートさせたアンドレ・S・ラバルトによって共同プロデュースされました。このシリーズは、同時代の映画監督たちに焦点を当て、彼らへのインタビューを通じて、当時の映画界の動向や思想を記録することを目的としていました。ヌーヴェルヴァーグという革新的な映画運動の勃興期に制作されたこのシリーズは、その後の映画史研究においても重要な資料となっています。

『恐竜と赤ん坊』は、ゴダールが『軽蔑』(1963年)に出演したラングとの対談を改めて実現したものです。監督を務めたラバルト自身も、『カイエ・デュ・シネマ』誌の批評家としてゴダールと親交があり、この対談は単なるインタビューではなく、二人の長年の信頼関係に基づいた、より深く個人的な交流と言えるでしょう。

撮影監督にはG・ペロー＝ミノー、編集はポール・ロワゾン、録音はポール・ボンヌフォンとアラン・コストが担当しました。白黒16ミリフィルムによるモノラル録音で制作されており、当時のテレビ番組の標準的な技術仕様が採用されています。

日本では劇場公開はされていませんが、1980年代にはアテネ・フランセ文化センター、1991年には草月ホールで上映されました。その後、2008年にはユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンが発売したゴダール監督作品を集めたDVDボックスに収録され、一般へのアクセスも容易になりました。

『恐竜と赤ん坊』は、単なるインタビュー映画にとどまらず、二人の巨匠の思想や創造性、そして映画芸術に対する深い愛情を垣間見ることができる貴重な記録です。二人の対話を通じて、ヌーヴェルヴァーグという映画運動の背景や、映画制作における多様なアプローチが見えてきます。また、映画史を学ぶ上でも、この作品は欠かせない資料となっています。映画ファンだけでなく、映画研究者にとっても重要な作品と言えるでしょう。

本作品は、ゴダールとラングという二人の巨匠の貴重な対談に加えて、ハワード・ヴァーノンも出演しています。この作品を通じて、20世紀半ばの映画界の重要な局面、そして映画制作における様々なアプローチを知る事が出来ます。

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