恒貞親王

恒貞親王（つねさだしんのう）

恒貞親王は、平安時代初期の皇族で、淳和天皇の第二皇子として生まれました。母は嵯峨天皇の皇女である正子内親王です。当初は異母兄の恒世親王がいましたが、その死後、淳和天皇の後継者として期待されるようになりました。

立太子と皇太子廃止

天長10年（833年）には、母方の叔父であり父方の従兄にあたる仁明天皇が即位すると、嵯峨上皇の意向により皇太子に立てられました。承和5年（838年）には紫宸殿で元服し、その際の礼儀作法や振る舞いは非常に優雅で美しかったと伝えられています。しかし、淳和上皇や恒貞親王自身は、政治的な権力闘争に巻き込まれることを懸念し、皇太子の辞退を度々申し入れたものの、嵯峨上皇や仁明天皇によって慰留されていました。

しかし、承和9年（842年）に嵯峨上皇が崩御すると、まもなく承和の変が発生し、この事件によって恒貞親王は皇太子の地位を廃されることとなりました。この変は、藤原良房らによる権力争いが背景にあったとされています。

出家と大覚寺の開祖

嘉祥2年（849年）に三品に叙せられますが、まもなく出家して恒寂と号しました。真如入道親王から灌頂を受け、嵯峨大覚寺の初祖となりました。仏道に深く帰依し、常に戒律を守り修行に励んだとされています。

元慶8年（884年）には、陽成天皇が事実上廃位された際に、後継者として即位を要請されましたが、これを固辞しています。この背景には、平安時代初期には皇族の身分変動に対する考え方が緩やかになり、廃太子になった者も皇位継承の可能性が完全には否定されなかったことが影響していると考えられています。

死去

元慶8年（884年）9月20日に薨去。享年60歳でした。自らの最期を悟ると、衣服を清め、仏前に香華を供え、西方に向かって結跏趺坐の姿勢をとって入寂したと伝えられています。その最期は、仏道に深く帰依した者としてふさわしいものであったと言えるでしょう。

人物

恒貞親王は、性格が穏やかで優雅であり、容姿も美しかったと評されています。

系譜

父：淳和天皇
母：正子内親王（嵯峨天皇の皇女、皇后）
妃：藤原愛発の娘
妃：藤原是雄の娘
子：2人（いずれも出家）

参考文献

武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 下巻』戎光祥出版、2009年

関連項目

* 恒貞親王伝

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