恩根内駅

恩根内駅：宗谷本線に花開いた、そして静かに幕を閉じた小さな駅

北海道中川郡美深町字恩根内に存在した、北海道旅客鉄道（JR北海道）宗谷本線の恩根内駅。2024年3月、長きに渡る歴史に幕を閉じ、廃駅となりました。本稿では、その歴史と周辺環境、そして人々の思いを紐解きます。

開業から廃止まで：幾多の変遷を辿る

1911年、天塩線の延伸開業と共に生まれた恩根内駅は、地域住民にとって重要な交通拠点でした。1986年には無人駅化、木造駅舎の解体、そして車掌車を改造した駅舎への移行など、時代とともに変化を遂げてきました。1993年には、現在の待合室が完成しています。

近年、利用者の減少が深刻な問題となっていました。2019年、JR北海道は沿線自治体に対し、宗谷本線の29駅について存廃に関する協議を求めました。美深町は当初、廃止の方針を決定しました。しかし、地元住民の強い要望を受け、町は維持管理費用を負担し、駅の存続を決定。住民による除雪や清掃などの協力を得ながら、維持費用を抑える努力が続けられました。しかし、利用者の減少は止まらず、2023年には恩根内自治会も駅の廃止を容認するに至ります。そして、2024年3月、とうとう廃止が決定されました。その後、待合室の解体も完了しています。

地域に根付いた存在：集落のシンボル

恩根内駅は、単なる交通拠点以上の存在でした。駅周辺には集落があり、開業後は物資の集散地として発展しました。駅舎が象徴するような、地域住民の生活と密着した駅でした。2012年に旧恩根内小学校を改装した「アートヴィレッジ恩根内」は、カフェやギャラリー、アトリエを併設した施設として、地域活性化にも貢献していました。また、近隣には役場出張所、警察署駐在所、郵便局などが存在し、生活に必要なインフラが整備されていました。

天塩川が流れ、自然豊かな環境に囲まれた恩根内駅周辺は、観光面でも魅力的な場所でした。地元出身の旧帝国海軍パイロット、柳谷謙治を偲ぶ「不滅の零戦魂　柳谷謙治之碑」も、歴史を感じさせる存在として人々の心に刻まれています。

多くの人の思いを乗せて：そして静かに幕を閉じる

恩根内駅は、地元住民の生活を支え、地域のシンボルとして長く親しまれてきました。しかし、時代と共に変化する社会情勢の中で、利用者の減少や維持費用の問題を克服することができませんでした。廃止は、多くの住民にとって残念な出来事ではあったでしょうが、長きにわたる歴史に幕を閉じることになりました。駅の記憶は、地域の人々の心の中に、そして歴史の中にしっかりと刻み込まれています。

駅構造と周辺環境

駅は1面1線の単式ホームを持つ地上駅で、無人駅でした。かつては相対式ホーム2面2線でしたが、無人化に伴い棒線化されました。また、手押し式の転車台も存在していました。林業が盛んだった時代には木材の出荷駅としての役割も担っていました。駅舎は、有人時代の木造駅舎から車掌車改造の駅舎を経て、1993年に現在の駅舎へと変わりました。

周辺には、恩根内集落、国道40号、美深町役場恩根内出張所、名寄警察署恩根内駐在所、恩根内郵便局、アートヴィレッジ恩根内などが存在しています。

恩根内駅の廃止は、地方の過疎化や交通事情の変化という課題を改めて浮き彫りにしました。しかし、その歴史と人々の思いは、これからも地域の貴重な財産として受け継がれていくことでしょう。

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