悪党狩り

悪党狩り：時代劇の傑作、その魅力に迫る

1990年、東京12チャンネル（現・テレビ東京）で放送された時代劇『悪党狩り』。藤沢周平の原作を基に、尾上菊五郎と鶴田浩二という豪華な顔ぶれで贈られた勧善懲悪劇は、多くの視聴者を魅了しました。

本作は、藤沢周平の連続テレビドラマ作品としては初の挑戦であり、北町奉行所同心の神谷玄次郎（尾上菊五郎）と町医者・新村出（鶴田浩二）が、陰ながら悪党を成敗していく物語です。初回は2時間スペシャルとして放送され、そのスケール感と緊迫感で視聴者の注目を集めました。なお、1990年にフジテレビ系列で放送された『神谷玄次郎捕物控』とは、同じ原作を用いた作品です。

特筆すべきは、その制作体制です。東映を代表するプロデューサー、俊藤浩滋が自身の個人事務所「藤映像コーポレーション」と共に企画・製作に参加。脚本には結束信二や飛鳥ひろしといった東映系の脚本家が名を連ね、鶴田浩二、池玲子、品川隆二といったレギュラー陣に加え、菅原文太、黒川弥太郎、桜町弘子、梅宮辰夫など、数多くの東映系の俳優がゲスト出演しています。さらには、端役にも東映京都の大部屋俳優が多く起用され、殺陣も東映剣会の殺陣師が担当するなど、松竹制作であるにもかかわらず、作品全体には東映色が強く反映されています。

興味深いのは、玄次郎が敵の前に姿を現す際に笛を吹くシーンです。この笛の音色は、以前同じ時間枠で放送された『新・木枯し紋次郎』第11話「笛の流れは三度まで」で使用された、旅の宿場女郎がお笛が吹く笛の音色と全く同一の音色であるという点です。このような細やかな演出も、作品全体の完成度を高める上で重要な役割を果たしています。

キャスト陣も豪華です。主人公の神谷玄次郎を演じるのは、歌舞伎界の重鎮、尾上菊五郎。その落ち着いた演技と風格は、同心の威厳を見事に表現しています。一方、町医者・新村出を演じるのは、数々の名作に出演してきた名優、鶴田浩二。彼の温厚さと正義感は、作品に深みを与えています。脇を固める池玲子、待田京介、品川隆二らも、それぞれの持ち味を生かした演技で作品を盛り上げます。

主題歌は、もんた＆ブラザーズが歌う『ばぁにんぐ』。力強い歌声と時代劇の雰囲気は絶妙にマッチしており、作品の世界観をさらに印象深いものとしています。

『悪党狩り』は、豪華なキャスト、東映色が強く出た制作体制、そして細部までこだわった演出など、多くの魅力を詰め込んだ時代劇です。再放送も何度も行われており、時代を超えて愛され続ける作品となっています。CSチャンネルなどで再放送があれば、ぜひ一度ご覧になってみてください。その魅力を、ご自身の目で確かめてください。

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