悪書追放運動

悪書追放運動の概要

悪書追放運動（あくしょついほううんどう）は、特定の書籍や文書を「悪書」と見なして排除しようとする活動を指します。この運動は、権力者による言論弾圧の一環として行われることもあれば、言論と表現の自由が保障された環境において市民運動として展開されることもあります。また、特に性的内容と見なされる書籍は、有害図書として国際連合から指定されることもあり、各国の法律に基づいて処罰される場合があるため、運動は現代でも重要な意味を持っています。

日本における悪書追放運動の歴史

日本では、悪書追放運動は戦前から戦後にかけて顕著な例がみられました。戦前の日本においては、政権にとって不都合な内容を含む書籍、美濃部達吉の天皇機関説やカール・マルクスの『資本論』などが対象となり、書籍の単純所持も犯罪とされ、特別高等警察によって逮捕される事例がありました。

戦後では、1960年代に入ってから、政府が「世論」や「教育上」の理由を挙げて再び悪書追放運動を開始します。特に1963年には池田勇人首相が「人づくり」政策を推進したこととともに、浄化運動が引き起こされました。この動きは地方自治体にまで波及し、「青少年保護育成条例」が各県に自主的に作成されるなど、運動が広範に広がりました。

漫画バッシングと市民運動

日本での悪書追放運動は、特に1955年に顕著でした。父母の会やPTAなどの市民団体が中心となり、子供向けの娯楽として人気を集めていた漫画に対する厳しいバッシングが展開されました。この運動は、政府や警察が密接に関与しており、表現規制推進派の民間団体と協力して行われたことが明らかになっています。

主なターゲットとなったのは、新人漫画家の作品に加え、『鉄腕アトム』や『月光仮面』などの 人気作品も含まれていました。竹内オサム氏によれば、漫画に対する規制は日本特有の現象ではなく、当時の国際的な潮流の一部でもあったとされています。

焚書運動の展開

悪書追放運動は、エロやグロに関する雑誌や書籍への規制から始まり、最終的には教育現場でも焚書にまで発展しました。1955年5月、東京母親連合会などが中心となり「三ない運動」を打ち出し、雑誌の焚書が行われました。この運動は、警察の陰にある活動であり、実際には政府や警察による表現規制の強化と結びついていたことが知られています。

このような動きに対して、数ヶ月後には、編集者たちは抵抗するための組織を立ち上げ、事態は沈静化していくこととなりました。市民運動と政府・警察の動きが交錯する中で、悪書追放運動の影響は長期にわたって続いていったのです。

悪書追放運動の世界的反響

悪書追放運動は日本国内に留まらず、国際的にも同様の運動が見られました。アメリカにおけるコミックス・コード規制や、ヨーロッパや北欧では過激な内容の漫画に対する規制が進行しており、日本における悪書追放運動も、この流れの一部として理解されることがあります。

特にイギリスでは、児童ポルノをめぐる規制が厳格化され、日本に対してより強い表現規制を促す声も上がっており、これらの運動は世界的な影響を持つことが指摘されています。

結論

悪書追放運動は、言論の自由と表現規制が交錯する複雑な運動です。日本国内においても、戦前から現在まで多様な形で続いてきました。現代でも悪書追放運動は表現に対する影響を及ぼし続けており、社会の文化的価値観や法律の影響を反映する重要な現象として位置づけられます。

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