悲歌 (映画)

映画『悲歌』（エレジー）について

1951年（昭和26年）に公開された『悲歌』は、東宝と映画芸術協会が提携し、山本嘉次郎が監督を務めた作品です。この映画は、才能ある青年作曲家が自己の音楽に対する批判に苦悩し、その中で出会った女性との恋愛を通して、人間の内面にある複雑な感情を描いています。

あらすじ

物語の主人公は、検事総長を父に持つ青年作曲家、亘理直彦です。彼はその才能を開花させ、交響楽「聖女」は世間から大きな反響を呼び、音楽家として成功を収めていました。しかし、彼の弟子である内山と親友の土岐大輔検事は、彼の音楽を「技巧に走り、真に心を打つ芸術ではない」と厳しく批判します。

この批判によって自信を失った直彦は、自暴自棄になり酒に溺れる日々を送る中で、キャバレーのマダムである美代に助けられ、彼女の家に身を寄せることになります。美代は、かつて故郷の東北で悲惨な過去を経験し、現在は銀座のキャバレー王である坂田の妾となっていた女性です。彼女は直彦に初恋の男性の面影を感じ、次第に惹かれていきます。一方、直彦もまた、娼婦である美代の中に聖女のような純粋さを見出し、二人は坂田の目を盗んで同棲生活を始めます。しかし、二人の関係は、それぞれの過去と社会的な立場によって、様々な困難に直面していくことになります。

キャスト

亘理直彦：上原謙
北川美代：高峰三枝子
土岐大輔：三船敏郎
坂田幸之進：志村喬
内山英一：三原純
今井猛虎：小杉義男
亘理信直：青山杉作
亘理よし子：英百合子
亘理輝子：鏑木ハルナ
ボーイ広瀬：堺左千夫
与太者サブ：生方功
小劇場マネージャー：小林十九二
若い医者：木村功
女給 横田ふみ：川久保とし子
婆や おしげ：三好栄子

スタッフ

企画：星野和平
製作：本木荘二郎
監督：山本嘉次郎
監督補佐：本多猪四郎
脚本：小国英雄、山本嘉次郎
撮影：中井朝一
音楽：渡辺浦人
美術：松山崇
録音：宮崎正信
照明：岸田九一郎
スチール：高木暢二
製作主任：根津博

作品のテーマと見どころ

『悲歌』は、音楽家の苦悩と、社会の底辺で生きる女性との恋愛を通して、人間の内面にある光と影を浮き彫りにしています。主人公たちの心の葛藤や、二人の関係がもたらす悲劇的な結末は、観る者の心を深く揺さぶります。また、当時の社会情勢や人々の生活が垣間見える点も、作品の魅力の一つです。豪華なキャスト陣による迫真の演技と、渡辺浦人による情感豊かな音楽も、この映画の見どころとなっています。

外部リンク

悲歌 - allcinema

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