悲田院

悲田院の歴史と役割

悲田院（ひでんいん）は、仏教の慈悲の理念に基づき、貧しい人々や孤児たちを支援するために設けられた施設です。その歴史は古く、日本国内外においても数多くの慈善活動の原点となってきました。

沿革の始まり

悲田院の起源については、聖徳太子が中国の隋の制度を模範とし、大阪にある四天王寺の一部として設立したという伝承が存在します。この四箇院の一つとして、悲田院は敬田院・施薬院・療病院と共に位置付けられており、特に敬老の日の由来としても語られることがあります。

中国の唐代に設置された同様の施設は、日本の社会福祉の礎として紹介されることが多く、このような施設が社会においてどのような役割を果たしてきたかを示す重要な事例です。実際、収容型の施設としては、ここまで遡ることができるのはこの悲田院が最初であると言われています。

光明皇后の貢献

日本においては、養老7年（723年）に光明皇后が興福寺に施薬院と共に悲田院を設置したことが記録されています。この記録が、現存する中では最も古いものとなります。この光明皇后の施策には、同時に二つの説が存在し、興福寺内の施薬院と悲田院が同一であるという説と、別々に設けられたという説があります。

奈良時代には、鑑真によって興福寺にも設立され、更なる広がりを見せることとなりました。平安時代になると、平安京の東西二カ所に増設され、光明皇后が設立した施薬院の別院としてその管理下に置かれました。

鎌倉時代以降の発展

鎌倉時代には、忍性が各地に新たな支援施設を開設し、悲田院はその流れの中で中世において重要な存在となりました。この時期以降、悲田院は各地域の社会福祉の取り組みの中核を成し、貧困層や孤児に対する支援を行う場として永続的に機能し続けました。

現代の悲田院

現在、悲田院は京都市の東山区にある泉涌寺の塔頭の一つとして存在し、平安京の悲田院の後身であると伝えられています。さらに、大阪市天王寺区の南端には悲田院町があり、これはJRや地下鉄天王寺駅近くに位置し、地名としてもその存在を今に伝えています。

このように、悲田院の歴史は単なる救済の場にとどまらず、日本の仏教文化や社会福祉の発展において重要な役割を果たしてきました。その精神は今もなお、多くの人々に受け継がれています。

もう一度検索