愛と死の記録

愛と死の記録

『愛と死の記録』は、1966年に公開された日活製作のモノクロ映画です。監督は蔵原惟繕、主演は吉永小百合と渡哲也が務めました。この作品は、戦後21年が経過した広島を舞台に、原爆の傷跡を抱えながら生きる人々の姿を描いています。

あらすじ

物語は、楽器店で働く松井和江（吉永小百合）が、写真製版工の三原幸雄（渡哲也）のバイクに誤って接触し、レコードを割ってしまうことから始まります。同僚のふみ子（浜川智子）の計らいで二人は公園で出会い、次第に惹かれ合います。しかし、幸雄は原爆で両親を失った過去を持ち、被爆者であることから結婚に踏み切れないでいました。幸雄の苦悩を知らない和江は、その理由を問いただしますが、彼は頑なに口を閉ざします。二人の間には、原爆という大きな壁が立ちはだかるのでした。

キャスト

松井和江：吉永小百合
楽器店に勤務する女性。
三原幸雄：渡哲也
写真製版工で、バイクを愛する青年。4歳の時に被爆し、両親を失った過去を持つ。
近所の娘：芦川いづみ
ふみ子：浜川智子
和江の同僚。
藤井：中尾彬
ふみ子の恋人。
和江の兄：垂水悟郎
和江の母：三崎千恵子
和江の義姉：鏑木はるな
金井進二
看護婦長：漆沢政子
患者A：日野道夫
患者B：河瀬正敏
看護婦：萩道子
横田楊子
脇田義信
露木護
板倉脇久
佐野浅夫
滝沢修

スタッフ

監督：蔵原惟繕
企画：大塚和
脚本：大橋喜一、小林吉男
撮影：姫田真佐久
照明：岩木保夫
録音：紅谷愃一
美術：大鶴泰弘
音楽：黛敏郎
編集：丹治睦夫
助監督：木下喜源
製作担当者：山野井政則
方言指導：吉田喜代子

製作の背景

本作は、吉永小百合と浜田光夫のコンビによる日活の純愛路線を継承する形で企画されました。しかし、撮影直前に浜田光夫が不慮の事故に見舞われ、急遽、新人であった渡哲也が代役を務めることになりました。渡哲也にとっては、初の文芸作品であり、大きな抜擢となりました。

脚本

オリジナル脚本でありながら、実話を基にしているとされています。吉永小百合は、大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』で紹介されている実話が基になっていると述べています。

撮影の舞台裏

浜田光夫の負傷というアクシデントに見舞われながらも、日活はすぐに渡哲也を代役に立て、撮影を強行しました。この強行姿勢は、社内で批判を呼んだようです。吉永小百合も、長年コンビを組んできた浜田の危機に際し、代役との共演をためらい、撮影延期を申し入れたものの、日活は封切り予定を動かせないと拒否しました。このような状況下で、蔵原惟繕監督が起用され、作品のムードを変えることで、吉永の説得に成功しました。

渡哲也もまた、浜田の代役を務めることに複雑な心境を抱えていましたが、監督の指導のもと、心理描写の多い演技に挑戦しました。撮影は、長時間の徹底的なリハーサルを重ね、厳しいものでしたが、吉永はヒロインの心情と一体化することで、充実感を得られたと語っています。渡哲也も、この作品を通して、役者としての難しさと喜びを実感したようです。

1966年夏には、広島で長期のロケーション撮影が行われました。当初8月5日からクランクインの予定でしたが、吉永の体調不良により、8月中旬にずれ込みました。

ロケ地

広島県内を中心に、数々の場所で撮影が行われました。

広島市
中区：原爆ドーム、平和記念公園、元安橋、相生橋、平和大橋、原爆病院、吉島刑務所付近
西区：庚午
南区：広島港、荒神橋
中本総合印刷大州工場、的場町
安芸郡坂町
呉市：狩留賀町、音戸大橋、桂ヶ浜

作品の評価

公開当時、『週刊読売』は、本作を「青春映画の佳作」と評し、原爆をテーマにしながらも、現代の青春の姿を生き生きと捉えた点を評価しました。また、吉永の演技と、渡哲也の演技開眼についても言及しています。『週刊平凡』は、渡哲也と吉永小百合の新しいコンビを高く評価し、二人の才能を浪費することなく、本格的な作品に挑戦し続けることを期待しました。

受賞

第17回ブルーリボン賞にて、渡哲也が新人賞を受賞しました。

作品の影響

吉永小百合は、本作への出演をきっかけに、原爆詩の朗読活動をライフワークとするようになりました。一方、渡哲也は本作以降、アクション映画を中心に活躍し、吉永との共演は、30年後の『時雨の記』まで実現しませんでした。

同時上映

和泉雅子と舟木一夫主演の『絶唱』が同時上映されました。

関連作品

ヒロシマ 原爆投下までの4か月
黒い太陽

外部リンク

愛と死の記録 日活
愛と死の記録 国立映画アーカイブ
愛と死の記録 ぴあ
愛と死の記録 映画の時間
* 愛と死の記録 - KINENOTE

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