愛はさだめ、さだめは死

『愛はさだめ、さだめは死』

概要

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの短編SF小説『愛はさだめ、さだめは死』（原題：Love Is the Plan the Plan Is Death）は、1973年に発表された作品で、同名の短編集の表題作でもあります。ヒト型の種族が登場しないこの作品は、巨大な蜘蛛に似た生命体であるモッガディートの一人称視点で語られています。彼は初めのうちは種族の本能に反抗しようとしますが、後にその運命に従うことになります。タイトルに含まれる「計画（Plan）」は、彼らの本能を指しています。

内容

物語の主人公モッガディートは、厳しいライフサイクルを持つこの種族の一員です。彼らは越冬の季節が来ると、暖かい季節中に持っていた理性的な思考を失い、本能のままに行動します。このことは、彼らが種として生存するための宿命であり、モッガディートはそれを乗り越えようと試みますが、次第にその力強さや切実さに抗うことができなくなります。

本作は1973年のネビュラ賞短編部門を受賞し、1974年のヒューゴー賞ノヴェレット部門にノミネートされ、同年ローカス賞短編部門でも第3位に評価されました。1975年に出版された、ティプトリー自身の短編集『Warm Worlds and Otherwise』に収録され、その後も様々なアンソロジーに掲載されています。

日本では、1975年に「SFマガジン」にて初めて伊藤典夫による翻訳が掲載され、その後、1987年にハヤカワSF文庫からの出版で再び注目を浴びました。この時の表紙は上原徹が担当し、巻末には大野万紀による解説も付されています。

表題作以外の収録作品

短編集には、ティプトリー特有のテーマやキャラクターが描かれた他の短編も収められています。例えば、「接続された女」はヒューゴー賞を受賞し、サイバーパンクの先駆的作品としても評価されています。このように集められた作品群は1970年代のSF文学の一端を形成しており、ティプトリーの作品が如何に重要な位置を占めているかを物語っています。

ティプトリーとその影響

また、ティプトリーが女性であることが公開されたのは1977年ですが、それ以前に書かれた作品から見える「男性的特徴」に関する考察が、短編集の冒頭に収められたロバート・シルヴァーバーグのエッセイに記されています。このエッセイは、ティプトリーの作品における性別や視点がどのように影響を与え合っているかを考察しており、彼女の文学的な価値を再認識させるものとなっています。

まとめ

『愛はさだめ、さだめは死』は、独自の世界観と深いテーマによって、多くの読者に強い印象を与え続けています。多くの賞を受賞し、様々な媒体にも引き継がれるこの作品は、SF文学における傑作として位置づけられています。ティプトリーの作品は、彼女の描くキャラクターやテーマを通じて、私たちに深い思索を促すものです。

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