慕容耐

慕容耐（生年不詳 - 285年）は、鮮卑慕容部の大人として知られています。彼の生涯は、権力簒奪とそれに伴う暗殺未遂、そして最終的な裏切りによる死という、波乱に満ちたものでした。

父は慕容木延、兄は慕容渉帰であり、慕容部は当時、遼東地域を拠点とする有力な鮮卑族の一派でした。太康4年（283年）、兄である慕容渉帰が亡くなると、本来であればその嫡男である慕容廆が後を継ぐはずでした。しかし、慕容耐は自らの野心のために、この正当な相続を無視し、地位を簒奪して大人となったのです。

さらに、慕容耐は慕容廆を自身の地位を脅かす存在と見なし、暗殺を企てます。しかし、慕容廆は事前にこの危機を察知し、逃亡を決意しました。慕容耐は直ちに追っ手を差し向けますが、慕容廆は遼東に住む徐郁という人物の下に逃れ、彼の家に匿われます。追っ手は徐郁の家を捜索しますが、慕容廆は席の裏に隠れて難を逃れました。

この暗殺未遂事件は、慕容耐の支配に対する不満を部内に広げることになりました。そして、太康6年（285年）、ついに部下の裏切りにより慕容耐は殺害されます。彼の死後、慕容廆が大人として迎えられ、慕容部の新たな指導者として担ぎ上げられました。

慕容耐の短い統治期間は、簒奪と裏切り、そして暗殺未遂という負の遺産を残しました。しかし、彼の死後、慕容廆が指導者となったことで、慕容部は新たな時代を迎えることになります。慕容廆はその後、五胡十六国時代において重要な役割を果たすこととなる慕容氏の基礎を築き上げました。

史書における記述

慕容耐に関する記述は、『晋書』載記第8（慕容廆載記）や『資治通鑑』巻81、『十六国春秋』巻23などに残されています。特に『資治通鑑』では、彼の名前が慕容刪と表記されています。これらの史料は、慕容耐の生涯や業績、そして彼の死が慕容部に与えた影響を知る上で貴重な情報源となっています。

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