慕容麟

慕容麟（ぼよう りん）

慕容麟は、五胡十六国時代の後燕の皇族であり、初代皇帝である慕容垂の息子です。彼は、後燕の歴史において重要な役割を果たしましたが、その生涯は波乱に満ちたものでした。

生涯

慕容麟は、前燕の呉王である慕容垂の庶出三男として生まれました。369年、慕容垂と共に前燕から前秦に亡命。前秦に亡命後、慕容垂は旧都である龍城に拠点を置き、皇太后との和解を計画しますが、慕容麟が首都の鄴城へ引き返してこの計画を暴露したため、慕容垂は前秦への奔走を決意します。慕容麟は皇太后からの信頼を得られず、慕容亮の下の沙城に左遷されました。

370年、兄の慕容令が前秦の宰相である王猛に騙されて前燕に帰還すると、龍城の奪取を企てますが、慕容麟が慕容亮にこの計画を明かしたため、慕容亮の配下の渉圭によって慕容令は殺害されます。同年、前秦が前燕を併呑すると、慕容垂は前秦の皇帝である苻堅を鄴城に迎え入れ、慕容麟の母を処刑しますが、慕容麟自身は処刑せずに離縁しました。しかし、383年から384年にかけて慕容垂が淝水の戦いの後の前秦から独立する際、慕容麟は数々の献言を行い、慕容垂からの信頼を得るようになります。

384年、慕容垂が後燕を建国すると、慕容麟は前秦の残党との戦いで多大な功績を立て、386年には趙王に封じられます。386年から387年、そして390年から391年にかけて、慕容麟は後燕の属国であった北魏の拓跋珪と共に、匈奴の劉顕などの北魏に対する脅威を打ち破りました。391年、慕容麟は慕容垂に拓跋珪を重用して中山に呼び寄せることを勧めましたが、慕容垂はこれに従いませんでした。

391年、拓跋珪が後燕と対立して侵略を開始すると、慕容垂は395年に太子の慕容宝を慕容麟や慕容農と共に攻撃に向かわせます。しかし、後燕と北魏が盛楽で対峙した際、拓跋珪は慕容垂が死去したという誤報を流し、慕容麟の配下の慕輿嵩が慕容宝を弑逆して慕容麟を皇帝に擁立しようと企てますが、この企みは露見して失敗に終わります。この事件が慕容宝と慕容麟の間に亀裂を生じさせ、後燕軍は退却を余儀なくされました。慕容宝は慕容麟を北魏に対する備えとして辺境の守りに配置しますが、慕容麟が慢心したため、北魏軍は参合陂で慕容宝の軍を打ち破りました（参合陂の戦い）。396年、慕容垂は北魏を攻撃して成功を収めますが、参合陂の側を通った際に嘆き悲しみ、病を発して死去。慕容宝が後を継ぎました。

帝位簒奪と最期

397年春、北魏軍が中山を包囲する中、慕容麟は中山内で慕容宝に対するクーデターを企てます。しかし、この企ては失敗に終わり、慕容麟は中山を脱出して太行山に拠点を置きました。慕容麟が慕容会の援軍を襲撃することを恐れた慕容宝は、中山を放棄しました。中山の人民は北魏に対抗するため、慕容詳を新たな統治者として支持します。同年夏、慕容詳が即位しますが、北魏との戦いを避け、飢餓を無視して残虐な行為を繰り返したため、人民の怒りを買いました。慕容麟は開門された中山を襲撃し、慕容詳を捕らえて殺害。自ら帝位に就き、人民に食料の蓄積を許可しますが、北魏との戦いを避け続けたため、最終的に北魏に中山を奪われてしまいます。

慕容麟は帝位を放棄し、鄴城の慕容徳のもとに身を寄せます。慕容麟は慕容徳に対し、鄴城が守備に適していないことを指摘し、黄河の南の滑台で北魏に備えることを勧めました。慕容徳はこれに従い、慕容麟を重用します。後に南燕を建国する慕容徳に帝位を勧めるなどしますが、最終的には反乱を企てたとして慕容徳に処刑されました。

慕容麟の生涯は、五胡十六国時代の混乱と権力闘争を象徴するものであり、彼の行動は後燕の歴史に大きな影響を与えました。

子

* 慕容根 - 後燕の散騎常侍、後に北魏に投降

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