慕容令

慕容令：悲劇の皇太子の生涯

慕容令（生年不詳 - 369年）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた慕容垂（後の後燕の初代皇帝）の嫡男です。その聡明さで父を支えましたが、猜疑心と策略が渦巻く時代に翻弄され、非業の死を遂げました。

生涯

慕容令は、慕容垂と先段氏の間に生まれました。369年、父である呉王慕容垂は、東晋の桓温の北伐を退けた功績がありましたが、太傅の慕容評から妬まれていました。慕容垂は内心の不安を息子には打ち明けていませんでしたが、慕容令はそれを敏感に察知し、父に解決策を尋ねました。

慕容令は、龍城に亡命し、幼い皇帝慕容暐が成長するのを待つべきだと進言しました。慕容垂は息子の提案に喜び、龍城へ向かおうとしますが、計画が漏れて追われる身となります。そこで慕容令は、慕容垂に前秦への亡命を勧めました。

前秦の皇帝苻堅は慕容垂を歓迎し、冠軍将軍に任命しました。慕容令の才能も高く評価し、手厚く礼遇しました。しかし、王猛は慕容垂一家を警戒し、排除しようと画策します。王猛は偽の情報を流し、慕容垂が東へ帰還するよう慕容令を誘い出しました。

慕容令は迷った末、旧友たちを率いて前燕の楽安王慕容臧の下へ出奔します。しかし、慕容暐は慕容令の裏切りを疑い、彼を沙城へ移送しました。死を覚悟した慕容令は、沙城で挙兵を計画。周辺の守備兵を手なずけ、着々と準備を進めます。

ついに慕容令は兵を率いて威徳城を襲撃し、城郎の慕容倉を討ち取りました。そして、東西の守備兵を招集し、多くの兵が集まりました。しかし、慕容令が龍城にいる鎮東将軍・渤海王慕容亮を襲撃しようとした際、弟の慕容麟が密告したため、慕容亮は城門を閉じて迎え撃ちました。さらに、慕容令が信頼していた渉圭が裏切り、慕容令を攻撃したため、慕容令は単身で逃走。味方は潰走しました。

渉圭は慕容令を追撃し、薛黎沢で捕らえて殺害しました。その後、渉圭は慕容亮に報告しますが、慕容亮は渉圭を誅殺し、慕容令の遺体を丁重に葬りました。

没後

慕容令の死後、後燕では献荘太子と追封されました。甥の慕容盛が即位すると、献荘皇帝と追尊され、妻の丁氏は献荘皇后とされました。

慕容令は、激動の時代に翻弄され、若くして命を落とした悲劇の皇太子でした。彼の短い生涯は、五胡十六国時代の複雑な人間関係と権力闘争を象徴しています。

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