慶長遣欧使節

慶長遣欧使節について

慶長遣欧使節（けいちょうけんおうしせつ）は、1613年に仙台藩の藩主、伊達政宗によって派遣された歴史的な外交使節です。この使節は正使にフランシスコ会の宣教師ルイス・ソテロ、副使に支倉常長を任命し、スペインの国王フェリペ3世及びローマ教皇パウロ5世との外交交渉や通商の協議を目的としていました。

背景と目的

大航海時代、世界各国は植民地を築くために競っており、カトリック教徒のスペインやポルトガルが先行していました。特にスペインはフィリピンやマニラ・ガレオンを拠点に多大な利益を上げていましたが、プロテスタント諸国のオランダやイギリスも植民地活動に力を入れていました。このような情勢の中、慶長14年には前フィリピン総督の乗る船が日本に漂着し、慶長16年にはスペインから答礼使が訪れるなど、日西関係が構築されていきました。しかし、徳川家康はスペインからの布教活動を警戒し、外交を開くことには消極的でした。

この対立した状況の中で、伊達政宗は独自に家康からの承認を得て、欧州に使節を送ることを決定しました。仙台藩にとって、使節の主要目的はスペインとの貿易交渉であるといわれています。この動きには、他国とのバランスを図り、国の勢力を高めようとの意図があったとされています。

政宗は、使節団を派遣するために特製のガレオン船「サン・フアン・バウティスタ号」を建造しました。この船は、江戸幕府から派遣された船大工の協力を得て建造されました。船を製造するためにはスペインの高度な造船技術が求められましたが、その技術は重要な国家機密とされていました。政宗はルイス・ソテロを使節団の正使に任命し、約180名の大部隊をメキシコ、スペイン、ローマへと派遣しました。

使節の旅程

使節団は1613年9月15日に出航し、約3か月後の1614年1月28日にアカプルコに到着、その後メキシコシティへ向かいました。いくつかの出来事を経た後、使節団は6月10日、スペインの艦隊を使って大西洋岸へと出港。その間に常長などの外交官は、国王フェリペ3世との面会を果たし、その後ローマ教皇とも謁見することができました。

使節団は1615年に帰国の途に就いており、フィリピンに立ち寄った後、1620年に日本へ再び帰国しました。ただし、日本では時代の流れとともにキリスト教が厳しく取り締まられる状況に突入し、使節の目的は達成されることはありませんでした。特に常長はその後、失意のうちに亡くなり、その墓は仙台にあります。

結果と意義

慶長遣欧使節は、その目的が貿易交渉でありながらも、多くの人々にとって日本初の国際的な外交交渉と捉えられる重要な試みでした。この使節の存在により、日本とヨーロッパの関係が築かれ、後の歴史における国際交流の礎となったと考えられています。また、近代において日本が西洋と交流を持つための踏み台となり、明治期にはその功績が再評価されました。

特に、国交を結ぶ契機には、岩倉使節団やその後の太平洋貿易への関心が深まる背景がありました。さらに、慶長遣欧使節に関する資料は国宝として保護されており、ユネスコの記憶遺産にも登録されています。これにより、支倉常長やその一行の存在が時間を経てもなお記憶され、国際的な文化交流の一環として評価されています。

慶長遣欧使節は、日本がヨーロッパとの関係を築く重要な一歩であり、その影響は現在の国際情勢にも繋がっています。

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