懺悔の刃

懺悔の刃（ざんげのやいば）について

『懺悔の刃』は、1927年10月14日に公開された日本の映画で、松竹キネマが製作・配給を担当しました。この作品は、名匠小津安二郎の監督デビュー作であり、彼にとって唯一の時代劇作品でもあります。映画はモノクロで、スタンダード、サイレント形式で製作され、上映時間は約70分です。

制作背景

小津安二郎は、映画制作のキャリアの初期に、監督助手として大久保忠素の元で経験を積んでいました。彼が監督として任命されたのは1927年の8月のことで、その後蒲田時代劇部にて本作の制作が行われました。しかし、撮影中に小津が予備召集を受け、そのためにファーストシーンは斎藤寅次郎が手掛けることになりました。

同年の11月には蒲田時代劇部が廃止され、小津はその後の作品を全て現代劇にシフトすることになります。このような経緯から『懺悔の刃』は小津の初期の重要な作品と位置づけられますが、現在この映画の脚本、ネガ原版、上映用プリントのいずれも消失しており、鑑賞することはできなくなっています。

あらすじ

物語は、木更津に住む泥棒の佐吉（演：吾妻三郎）が主人公です。彼は弟の石松（演：小川国松）の家を訪れますが、石松は牢獄から出たばかりで、兄に更生を望んでいます。佐吉の相棒は、彼を犯罪の道から引き離すために、かんざし泥棒の罪を弟になすりつけ、その結果、石松は釈放されものの奉公先を失い、再び盗みの生活に逆戻りしてしまいます。物語は佐吉が最後の大立ち回りを繰り広げ、山城屋庄左衛門（演：野寺正一）に命を奪われる形で幕を閉じます。

スタッフとキャスト

本作品の監督と原案は小津安二郎が担当し、脚本は野田高梧によって執筆されました。撮影を手掛けたのは青木勇で、キャストには以下のような配役が含まれています。

• - 木更津の佐吉：吾妻三郎
• - 木鼠の石松：小川国松
• - 同心真鍋勝十郎：河原侃二
• - 山城屋庄左衛門：野寺正一
• - 娘お八重：渥美映子
• - 乳母お辰：花柳都
• - 越前屋の娘お末：小波初子
• - くりからの源七：河村黎吉

主演の吾妻三郎は、当時人気だった阪東妻三郎に容姿が似ていたため、役者名が「吾妻」と発音されることはなく「われ妻三郎」と誤って知られることが多かったといわれています。そのため、阪妻を観に来た観客は混乱することもありました。

参考資料

この映画に関する詳細な情報は、以下の文献に記されています。

• - 小津安二郎著、井上和男編『小津安二郎全集 上』新書館、2003年。
• - 厚田雄春、蓮實重彦『小津安二郎物語』筑摩書房、1989年。

さらに映画に関する情報は、日本映画データベースやallcinema、IMDbのウェブサイトなどでも確認できます。

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