河原侃二

河原侃二：多才な芸術家の生涯

河原侃二（かわら かんじ、1897年4月16日 - 1974年1月26日）は、日本の演劇、詩、写真の世界で才能を発揮した人物です。本名は同じで、詩人としては河原森月（かわら しんげつ）の筆名を用いていました。

生い立ちと文学活動

1897年、兵庫県赤穂に生まれたとされていますが、群馬県前橋市生まれという説もあります。幼少期に東京へ移り、正則中学校から群馬県立前橋中学校へ編入。1914年、萩原朔太郎と共に詩誌『侏儒』を創刊し、編集人として活動を開始。同誌は、朔太郎の他、北原白秋、室生犀星ら著名な詩人が参加し、群馬県初の本格的な詩誌として評価されました。また、絵画にも興味を持ち、版画作品を同誌に掲載。短歌作品は詩誌『異端』に掲載されました。1918年には、詩誌『天景』を創刊し、萩原恭次郎らが参加しました。

演劇の世界へ

上京後、本郷洋画研究所で洋画を学びましたが、後に断念。記者として働いた後、新劇の世界へ足を踏み入れました。青山杉作の「新劇団」、友田恭助・初代水谷八重子の「わかもの座」、「踏路社」に参加し、舞台俳優として活動。「浅草オペラ」にも出演していた時期があったとされています。1923年の関東大震災後には、小山内薫・土方与志の「築地小劇場」、水谷竹紫・初代水谷八重子の「第二次芸術座」、井上正夫一座に参加。「築地小劇場」では設立メンバーとして、演技部で活躍しました。

映画と写真の時代

1926年、タカマツ・アズマプロダクションに入社し、時代劇を中心に映画俳優としてのキャリアをスタート。同年公開の『黄門漫遊記』では水戸黄門役で主演を務めました。また、徳永直らと劇団「先駆座」を結成し、新劇運動にも取り組みました。1927年には松竹蒲田撮影所へ移籍し、小津安二郎監督のデビュー作『懺悔の刃』にも出演。写真家としても知られ、ヴェスト・ポケット・コダックを用いた撮影技術に長けていました。1936年には、技術書『ヴェス単作画の実技』を出版。松竹大船撮影所へ異動後も、映画出演を続けました。

戦後から晩年

戦後は松竹を離れ、東宝作品への出演を経て、大映東京撮影所に入社。脇役として多くの作品に出演しました。テレビドラマ『少年ジエット』にもレギュラー出演。赤穂出身の縁から、雑誌『播磨』の表紙に版画を寄稿。1964年には、木下謙吉の歌集に『跋』を執筆し、口絵の版画を制作しました。1968年公開の『高校生芸者』以降の出演記録は見当たらず、消息不明となっていましたが、1974年に東京都渋谷区の病院で死去したことが判明しました。

フィルモグラフィと著作

河原侃二は、数多くの映画に出演しました。主な作品には、『黄門漫遊記』、『懺悔の刃』、『朗かに歩め』、『生さぬ仲』、『有りがたうさん』、『父ありき』、『花咲く港』、『愛染草』、『自由学校』、『あにいもうと』、『或る女』、『川のある下町の話』、『宇宙人東京に現わる』、『夜の蝶』、『氷壁』、『鍵』、『白い巨塔』などがあります。また、『侏儒』、『天景』などの詩誌の編集・執筆を手掛け、『ヴェス単作画の実技』といった写真に関する著作も残しました。

河原侃二は、演劇、詩、写真、映画と多岐にわたる分野で才能を発揮し、日本の芸術文化に貢献した人物として記憶されています。

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