成層圏赤外線天文台

成層圏赤外線天文台 SOFIA（Stratospheric Observatory for Infrared Astronomy）

SOFIAは、アメリカ航空宇宙局（NASA）とドイツ航空宇宙センター（DLR）が共同で開発・運用した、赤外線観測用の飛行天文台です。ボーイング747SPを改造した機体に、直径2.5mの反射[[望遠鏡]]を搭載し、高度約12kmの成層圏で観測を行いました。SOFIAは、地球大気に含まれる水蒸気による赤外線の吸収を避けるため、成層圏まで上昇して観測を行うことが特徴です。また、航空機であるため、地球上のあらゆる観測ポイントに移動できるという利点も持っていました。

概要

SOFIAは、ユナイテッド航空で定期便として使用されていたボーイング747SPを改造した機体（登録記号N747NA）を基盤としています。この機体は、以前は「クリッパー・リンドバーグ」という愛称で知られていました。SOFIAの観測は、機体後部側面のドアから望遠鏡を露出させて行います。

初期には、1～655マイクロメートルの赤外線観測装置と0.3～1.1マイクロメートルの高速光学観測装置を含む9つの観測装置を搭載していました。これらの装置を用いて、惑星の大気や地表、彗星の構造、星間物質、恒星の組成などの研究が行われました。

SOFIAの基地は、カリフォルニア州ランカスターのエドワーズ空軍基地にあるNASAドライデン飛行研究センターでした。計画では、20年間にわたり週3～4回の夜間飛行で観測を行う予定でしたが、2014年にNASAの予算案で観測予算が認められず、2014年10月以降は観測運用が停止し、格納庫で保管されることになりました。

望遠鏡

SOFIAに搭載された望遠鏡は、直径2.5mの反射[[望遠鏡]]で、赤外線観測用としては最大級のものです。主鏡の直径は2.7mで、これは航空機搭載型としては最大、地上設置型と比較しても中規模です。主鏡の再コーティング施設は、カリフォルニア州サンタクララにあります。

望遠鏡全体の組み立てはDLRが担当し、航空機に関する責任はNASAが負っていました。望遠鏡の製造はヨーロッパの企業に下請けされ、架台はドイツ、主鏡はフランス、副鏡はスイスで製造されました。観測装置は、ミッションごとに変更が可能で、一般的な観測目的の装置2つの他に、研究者が特別な目的のために設計・組み込むことも可能です。

航空機

SOFIAに使用されたボーイング747SPは、パンアメリカン航空で1977年に運用を開始しました。当初は「クリッパー・リンドバーグ」と名付けられ、チャールズ・リンドバーグの未亡人によって洗礼を受けました。この機体は、1986年にユナイテッド航空に購入され、1995年に退役しました。その後、NASAがSOFIAプロジェクトのために購入し、L-3 Communications Integrated Systems社で飛行天文台としての改造を受けました。改造の準備と確認には、別の747SPの一部を利用したモックアップが使われました。

SOFIAの初飛行は2007年4月26日に行われました。試験終了後には、運用と維持はエバーグリーン国際航空が担当しました。2007年5月21日には、リンドバーグの大西洋単独横断飛行80周年を記念して、再び「クリッパー・リンドバーグ」と命名されました。

プロジェクトの進展

SOFIAは、2004年8月に最初の地上テストでポラリスを撮影しました。2006年には、スケジュールの遅れと予算超過のためプロジェクトが見直されましたが、技術的な問題はないと判断され、プロジェクトは再開されました。2009年には望遠鏡ドアを開けたままの飛行試験を行い、2010年5月には最初の飛行観測（ファーストライト）に成功しました。この観測には、コーネル大学が開発したFORCAST（Faint Object infraRed CAmera for the SOFIA Telescope）が使用され、木星の赤外線画像が撮影されました。

2013年4月には100回目の飛行を達成し、2014年2月末にはすべての観測機器が揃いました。しかし、その直後に発表された2015年度予算で観測予算が認められず、観測運用が困難になりました。SOFIAのプロジェクトには、1990年代半ばから12億5千万ドルの予算が投入されていましたが、年間の運用経費は約8000万ドルと高額でした。

2022年4月28日、NASAとDLRはSOFIAの運用を終了することを発表しました。

参考資料

関連項目

カイパー空中[[天文台]]
赤外線天文学
スピッツァー宇宙[[望遠鏡]]

外部リンク

Universities Space Research Association による公式ページ
NASAによる紹介
WELT Documentary - YouTube

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